生命科学における研究伝統の「細胞の意思データベース」解析による再検討

構築済みの「細胞の意思データベース」の増強と分析をもとに、細胞に心や意思などを帰属させる擬人主義的手法を洗練させ、研究成果を国際的な学術誌で公表する。

プロジェクト内容については,当該年度の活動報告書をご覧ください.

目的

研究代表者および分担者によって構築された「細胞の意思データベース(Cell Mind Database: CMDB)」の分析成果を著名な国際誌(Science, Current Biology, Theoretical Biology, Biological Theoryなど)に掲載することを目指す。その過程で、生命科学における主流派の研究伝統における方法論や存在論を再検討し、CMDBの切り拓く新たな研究伝統に求められる方法論と存在論を探求する。最終的に、異なる研究伝統に基づくデータベース群との連結も試み、主流派の研究伝統との境界に生じる緊張を解消して、複雑な生命現象に向けた多元論的なアプローチの展開を試みることも、本研究プロジェクトの射程圏内にある。

内容

研究代表者の田中は、2018年度の学事振興資金(共同研究「細胞機能の研究における擬人主義の擁護:科学哲学と情報構築を通じて」)および2019年度の学事振興資金(共同研究「細胞の意思データベースの構築・分析とそれに基づく生命の統合的理解に向けた研究」)においても研究代表者を務め、本研究プロジェクトのメンバーでもある金子と佐藤と共に「細胞の意思データベース(Cell Mind Database: CMDB)」を構築した(すでに義塾のサブドメインに設置し、公開可能な状態となっている)。本研究プロジェクトでは前年度に引き続きCMDBの更なる増強と分析を行い、その成果としての理論的・方法論的論考を著名な国際誌(Science, Current Biology, Theoretical Biology, Biological Theoryなど)に掲載することを目指す。
細胞に心や意思などの概念を適用する擬人主義はきわめてマイナーであり、生命科学の主流の「研究伝統」、すなわち還元主義や機械論に反するがゆえに、反射的な拒絶もしくは感情的な反発に遭うことも少なくない。しかしながら、主流の研究伝統の方法論的・存在論的命令に背くことは、必ずしも非科学性を意味しない。むしろ現時点での主流派とは異なる方法論的・存在論的見地からの生命現象の探求は、科学における異なる研究伝統の創出を意味する。未だ多くの謎を秘める複雑な生命現象の解明には、単一の研究伝統の独占よりも、複数の研究伝統の競合による多元論的アプローチが必要である。
本研究ではそのようなアプローチを追求するために、まずはCMDBを増強することにより、生命科学が説明すべき新たなデータを供給する。次に、具体的な研究(ヒトデ再構築における間充織細胞の行動と意思の考察)を通して上記アプローチの有効性を実証する。最後に、複数の異なる研究伝統を比較しながら、CMDBの切り拓く新たな研究伝統の可能性を検討する。これらの研究成果の国際的な学術誌への掲載を目指すと同時に、他データベース群との連携を図り、異なる研究伝統との境界に生じる緊張を解消して複雑な生命現象の統一的な理解を追求する。

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