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棘皮動物イトマキヒトデにおける細胞外小胞を介した免疫制御機構

イトマキヒトデ成体の体腔液中に大量に存在する細胞外小胞が、成体の細胞性免疫応答に対してどのように機能しているかを探る。

目的

イトマキヒトデの成体は広大な体腔を有しており、その体腔を満たす体腔液には体腔細胞と呼ばれる免疫細胞が含まれている。体腔細胞による免疫応答は、異物に対する凝集塊の形成によって評価できる。凝集塊形成を伴う免疫応答の実現には高度な細胞間コミュニケーションが必要であるが、体腔細胞が、広大な体腔を満たす体腔液中でどのようにして効率的な情報伝達を行っているかは不明である。近年、細胞間の情報伝達を媒介する手段として、細胞外小胞と呼ばれる、細胞が分泌するナノメーターサイズの小胞が注目されている。我々は先行研究において、体腔液中に細胞外小胞が大量に含まれること、体腔細胞が細胞外小胞を分泌すること、細胞外小胞非存在下では体腔細胞が形成する凝集塊のサイズが小さくなることを見出した。これらの事実は、細胞外小胞が体腔細胞による免疫応答を制御している可能性を強く示唆している。本研究では、細胞外小胞が、体腔細胞における免疫関連遺伝子の発現を制御する可能性を探る。

内容

予備解析から、バクテリア投与2時間後の個体から単離した細胞外小胞には、未感作個体に含まれる細胞外小胞と比較して、1個あたり約3倍量のタンパク質が含まれていることが明らかになっている。また、未感作の体腔細胞に免疫刺激後の個体から採取した細胞外小胞を投与すると、未感作個体から採取した細胞外小胞を投与した場合と比べ、ある種のサイトカインの発現量が有意に上昇するという予備データも得られている。これらの事実は、免疫刺激後の細胞外小胞は、未感作時の細胞外小胞と質的に異なることを意味している。そこで本研究では、免疫応答過程で経時的に採取した細胞外小胞が、未感作の免疫細胞における免疫関連遺伝子の発現をどのように変化させるかを調べる。具体的には、まず、個体の免疫応答状態の経時変化を、①未感作フェーズ、②活性化フェーズ、③応答フェーズ、④抑制フェーズ、⑤終了フェーズの5段階に分類する。この分類には、各種炎症性/抗炎症性サイトカインを中心とした免疫関連遺伝子の経時的発現パターンを用いる。次に、各フェーズを特徴づける応答時間毎に細胞外小胞を単離する。これらの細胞外小胞を未感作の体腔細胞に各フェーズの細胞外小胞を投与し、各フェーズの細胞外小胞が有する情報によって体腔細胞における各種免疫関連遺伝子の発現パターンがどのように変化するかを確かめる。細胞外小胞投与後の免疫関連遺伝子の発現パターンから、各フェーズで分泌された細胞外小胞が有する情報を推測することで、細胞外小胞による免疫制御モデルを構築する。

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