海産無脊椎動物受精時の卵活性化を誘起する卵内カルシウムイオン上昇機構の研究
受精(卵活性化)時の卵内カルシウムイオン上昇は普遍的な現象だが、多くの種でその機構は明らかでない。様々な種を用いてそのメカニズム及び共通性、種特異性を解析する。
プロジェクト内容については,当該年度の活動報告書をご覧ください.
目的
受精は有性生殖を行う生物にとって、新たな個体の出発点として重要な事象である。受精時の卵活性化には卵内カルシウムイオン(Ca2+)上昇が重要な役割を果たしている。Ca2+上昇は現在のところ動物界における 普遍的は現象であるが、卵内の Ca2+上昇パターンは種によって多様性に富んでいる。これまで報告された動物 の多くでは、受精時に卵細胞質中で イノシトールトリス三リン酸(IP3)依存性 Ca2+遊離機構が機能している。 申請者のグループは IP3 依存性 Ca2+遊離機構以外にも、cyclic ADP ribose や NAADP、卵細胞膜上の Ca2+チ ャンネルを介した卵外からの Ca2+の流入など、複数の卵内 Ca2+遊離機構が機能していることを数種の動物で 報告しており、IP3 以外の Ca2+遊離機構を含めた総合的な卵内 Ca2+遊離機構の役割に着目している。本プロジェクトでは多種の動物卵、特に海産動物(原索動物、棘皮動物、軟体動物、環形動物等)を用いて Ca2+上昇パターンを詳細に解析することで、種間を超えた共通性及び種に依存した特殊性を検討する。以上を 踏まえて卵内 Ca2+ 上昇をトリガーする精子因子とそのターゲットを同定し、精子による受精時の卵活性化機構の本質を明らかにすることを目指す。
内容
動物の生殖は多様性に富み、一部のモデル動物を除くと採卵、人工授精の方法が確立されているものは少ない。様々な動物の卵で受精時の Ca2+上昇を観察するため、それぞれの材料に適した配偶子調整法や測光時の卵 保定法、媒精時の精子濃度など事前に十分に検討しておく必要がある。本プロジェクトでは、日吉キャンパス内にある申請代表者の研究スペースで材料動物の配偶子を扱う上での基礎的な技術の検討を行い、顕微蛍光測 光装置を備えた機関(東北大学大学院生命科学研究科附属浅虫海洋生物学研究教育センターなど)を利用して 受精時の Ca2+上昇パターンのデータ取得を行う。