緩歩動物クマムシの幼若ホルモンによる性決定機構とその進化

申請者は性染色体を持たないクマムシの性決定に着目し、クマムシで幼若ホルモン(JH)を同定し、性決定におけるJHの効果を解明し、脱皮動物の進化について考察する。

プロジェクト内容については,当該年度の活動報告書をご覧ください.

  • メンバー :
    松本 緑(代表)
  • プロジェクト期間:
    2023年度プロジェクト [ 2022年度〜2023年度 ]

本プロジェクトは終了しました

目的

研究代表者は幼若ホルモンが緩歩動物クマムシの性決定に関与すると仮定し、クマムシから幼若ホルモンの一種ファルネセン酸メチル(MF)の存在を発見し、発生過程のMF 曝露によるF1メス出現率上昇を示した。しかし、節足動物に存在する幼若ホルモン受容体 Met は存在せず、進化的に幼若ホルモン本体は緩歩動物から存在するが、受容体Metは節足動物が新しく獲得したと考えられる。本申請では、クマムシの原始的な幼若ホルモン受容体を探索し、受容体進化の道程を解明する。幼若ホルモンの合成アナログであるフェノキシカルブをビオチン標識し、幼生期のクマムシ抽出液より幼若ホルモン新規受容体の単離を目指すとともに、系統進化的に節足動物と緩歩動物の中間に存在する有爪動物のゲノムデータを活用し、幼若ホルモン合成酵素、幼若ホルモン受容体遺伝子を探索し、進化上の Met 出現時期を詳細に解明する。

内容

1.クマムシ幼若ホルモン受容体のスクリーニング
1)フェノキシカルブ(幼若ホルモン合成アナログ)のビオチン化
フェノキシカルブ前駆体の2-(4-Phenoxyphenoxy)ethanamine (AChemBlock社)の末端をアジド化して、ビオチン化を行う。
2)ビオチンレジンを用いた幼若ホルモン受容体のアフィニティー精製
クマムシの発生過程では JHAMT は胚発生後期に転写が上昇し、成体に比べて1000倍を示し、孵化直前から幼虫初期にJHが作用すると予想される。プルダウン法により上記化合物に結合する幼若ホルモン受容体候補タンパク質を探索する。
3)得られた配列をドメイン検索などにより 特異的結合タンパク質の構造を決定する。既知の転写因子であれば、レポーター解析により幼若ホルモン特異的転写が起こるか否かを検討する。
2.有爪動物における幼若ホルモンとその受容体の探索
1)系統進化的に節足動物門と緩歩動物門の中間にある有爪動物ゲノムデータより JHAMT 遺伝子とMetに保存されるβHLH-PAS ドメインを保有する遺伝子を探索する。
2)得られた配列を含めてβHLH―PAS ドメインを持つ遺伝子の系統樹を作成し、Metに含まれる遺伝子の存在を検討し、幼若ホルモン受容体の進化について考察する。

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