ハチクマ(タカ目タカ科)の総合的研究
プロジェクト内容については,当該年度の活動報告書をご覧ください.
目的
本研究プロジェクトは2017年度・2018年度に行った「ハチクマのハチ防御機構の研究」を発展させ、2019年度からはハチクマを様々な科学的視点から研究するものである。具体的には以下の通りである。 ハチクマは猛禽としては珍しくハチ(スズメバチの仲間・ミツバチの仲間など)の巣を襲って幼虫等を捕食する性質を持つ。ハチクマの抗ハチ毒免疫やハチ刺傷忌避メカニズムを解明することを引き続き本プロジェクトの目的とする。
ハチクマは同一種内に多彩な羽毛色斑パターンを持つ。羽毛色斑はパターン形成時の細胞間情報伝達の結果と考えられるので、ハチクマのゲノム研究から羽毛色斑の基盤となる遺伝子の機能を探る。
ハチクマの渡り経路については多数の観察者による継続的な記録が求められる。 ハチクマの捕獲を行い、マーキングすることで詳細な渡り経路の解析を行う。
内容
渡り鳥であるハチクマは毎年5月末から6月初旬に日本に飛来し、野生のクロスズメバチを中心にハチ食を開始する。特に初夏にはミツバチを狙って養蜂場の近辺に出没することが多い。樋口・時田らはハチクマの渡りルートの解明を行うために、ハチクマを捕獲して発信器を取り付ける研究を長年行ってきた。今年度も野生のハチクマを捕獲して渡りルートの解析用にマーキングすると同時に羽毛や血液を採取し、①免疫系や色斑形成で発現する遺伝子の網羅的解析(長井・小野)、②ハチクマの羽毛成分の科学的分析(坂本)、③ハチクマの羽毛成分がミツバチに与える影響のバイオアッセイ(小野・樋口)を連携して行い、ハチクマの持つ特色の総合的な解明を目指す。これまでのハチクマの捕獲および血液・羽毛サンプルの採取は環境省・捕獲地(青森県)の捕獲許可を得て行っており、2020年度についても申請予定である。
①血液で発現する遺伝子の網羅的解析
昨年度までに色斑形成関連遺伝子の多型を確認しているので、2020年度は候補遺伝子を近縁種と比較したり、種内系統の分析をしたりすることが中心となる。免疫系に関しては東大農学部とも連携して解析を行う。
②ハチクマ羽毛成分の科学的分析
協力企業等の機器を使用して、羽毛に付着している成分のガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)を行う。ここで得られたデータを元に次のバイオアッセイを行う。
③ミツバチを用いたハチクマ羽毛成分のバイオアッセイ
閉鎖飼育下のミツバチ(働き蜂)を検定チャンバー内に封入してハチクマ羽毛に含まれる成分を与え、行動が抑制されるかどうかについてビデオ解析を行う。