量子乱流の2流体結合ダイナミクス
極低温の液体ヘリウムは、粘性がゼロの超流動成分と粘性を有する常流体成分の混合状態であり、それらがそれぞれ、両方乱流に遷移した際のダイナミクスを数値的に検討する。
プロジェクト内容については,当該年度の活動報告書をご覧ください.
目的
本研究の目的は、極低温で実現する超流動ヘリウムの2流体混合状態におけるダイナミクスを理論ならびに数値シミュレーションによって解明することである。
内容
粘性のない超流動成分は、量子化された渦糸からなり、渦点(渦線素)が作る誘導速度場をビオサバール積分することで求めることができる。そのような渦糸は流れ場が高速になると毛玉のようなタングル状態になり、粘性を有する常流体成分と相互作用をすることが知られている。その相互作用を加味した方程式をもとに、渦点を追跡するラグランジュ的な渦法とオイラー的なNavier-Stokes方程式を結合して数値シミュレーションを行う。超流動成分が乱流化し、常流体成分は層流の状態をT1遷移後の状態と呼ぶが、この際の矩形ダクト内の常流体の流れ場として、管壁近くが平らになるtail-fattened流と呼ばれる状態が実験で確かめられた。このような流れ場の再現ならびに、メカニズムの解明を行う。また、常流体も乱流遷移した2流体乱流状態をT2遷移後の状態と呼ぶが、この際常流体のみの古典流体では運動エネルギーの乱流スペクトルは波数の-5/3になることが知られているが、量子乱流ではスペクトルが-2乗となることが実験によって示されており、本現象の解明も実施する。