対象と事象の知覚体制化に関する実験的検討

視覚のみならず皮膚感覚など身体全体と環境との関係を「事象」知覚の枠組みから検討する。関係,生物らしさ,ベクションなど運動知覚とともに明るさの知覚を扱う。

プロジェクト内容については,当該年度の活動報告書をご覧ください.

目的

我々は、運動事象に知覚される生き物らしさ及び意図、因果関係などの関係、触運動による対象同定過程の検討、自己と環境との統合としての皮膚感覚での自己運動知覚及び明るさ知覚の問題を、時間的特性と空間的特性をあわせた「事象(event)」の枠組みの中で実験的に検討してきた。
周囲の事象も、我々自身も絶えず動き変化する。我々は刻一刻変化する世界の中で生活している。その変化の中で、「始まり」「終わる」事象が知覚の単位であると考えられる。動くものの中から我々は関係を知覚している。心理学においてはそれを意味的連関の知覚と呼ぶ。また、視覚に限らず、外界の様々な変化から環境中の事物及び自己についても知覚している。ここでは我々自身の運動の知覚を含む日常的な運動事象をとりあげ、様々な関係が知覚される条件について実験現象学の立場から、心理学のみならず、哲学の関連領域の知見とあわせて包括的な検討を行う。

内容

我々は動きという時系列上の変化から様々な事象を知覚している。動きの中に意味や関係、生き物らしさを特定する情報が含まれている。同様に、動きの中には我々自身に関する情報も含まれている。自己の移動についての知覚が、これまで視覚を中心に研究されてきたが、視覚以外の感覚からの情報も含めて、感覚器官が何かにかかわらず、身体全体で環境に働きかけ、その時系列的な変化から自己移動を含む様々な事象を知覚している。加齢変化も加味して、身体運動を通じた環境への働きかけという観点から知覚を理解していく。
こうした事象知覚は運動だけにあるのではない。我々の知覚は、その時々の状況に応じて、より簡潔なまとまりへと変化する。それに伴い面の明るさの知覚も変化する。不可能図形を用いて、事象知覚として明るさの知覚を考察する。

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