「細胞の意思」と細胞行動制御メカニズム
「細胞行動データベース」と「細胞の意思データベース」を拡張しながら分析を加え、細胞の科学のあるべき姿と今後の方向性について総合的な考察をおこなう。
プロジェクト内容については,当該年度の活動報告書をご覧ください.
目的
本研究プロジェクトの主な目的は以下の2つである。第一に、細胞行動を素行動と複合行動に分けて考えたときに、細胞の意思を措定する説明モデルと、措定しない説明モデルのいずれが優れているかについて、具体例に即しながら比較・検討する。第二に、従来のアプローチに環境や文脈の視点を取り込むことで、より包括的な細胞の科学のあり方を追求する。
内容
まず、細胞の素行動および複合行動のそれぞれに関する「細胞の意思を措定する説明モデル」と「細胞の意思を措定しない説明モデル」の特徴づけと比較については、2022年度までの研究プロジェクトにおいてある程度考察を進めてきた。今回はこの考察をヒトデ幼生の胃細胞の暴走行動などの具体例に即してさらに進め、論文としてまとめて発表する。
次に、従来の研究においては、置かれた環境によって個々の細胞の行動や意思に実際にどのような変化が生じるのかということについては、あまり掘り下げられて来なかった。そのような、いわば細胞の文脈依存的な意思決定機構の解明には、本研究プロジェクトで構築してきたデータベースが貢献しうる。この解明に必要なデータを新たに収集しながら、データベースの意義を論文で発表する予定である。
以上の研究の背景には、細胞の科学のあるべき姿についての哲学的な仮定が潜んでいる。この仮定を浮き彫りにし、科学思想史のなかに位置づけながらその正当化を試みることで上記の研究を補完することも、本研究プロジェクトの一環である。