化学実験のオンライン授業用映像教材の開発

化学実験は出席して体験することが重要な授業であるが、コロナ禍の緊急時や予習・復習、対面授業欠席者の補講用にも利用できる教材を開発する

プロジェクト内容については,当該年度の活動報告書をご覧ください.

事業概要

コロナウィルス感染拡大を防ぐために,多くの大学が昨年度から引き続き,一部遠隔授業の対応をとった.本来は参加して体験することが重要な実験授業も従来の授業形態では教室内が密になってしまう.そのため,昨年度秋学期に続き,本年度もクラスの半分ずつ対面実験を行い,残りの半分はオンライン教材を準備して課題に取り組んでもらった.昨年度作成したオンライン教材が非常に役に立ったが,今年度も授業に必要な教材を追加作成するとともに,将来,起こりうる緊急時に使用できる教材も作成した.オンライン実験用だけではなく,対面実験用の予習動画教材を作成することで,学生の実験室滞在時間を減らし,復習動画教材で学生の学習のフォローを行うことができた.また,対面授業を欠席した学生用のオンライン教材も作成することで,欠席者への対応もできた. TAにはレポート採点業務をしてもらったが,実際に体験していない実験について動画を視聴して,業務を遂行してもらった.
理工学部にも,一部,教材として提供している.また,従来から作成してきた「化学実験の基本操作」の動画も拡充することができた.この「化学実験の基本操作」動画は自然科学研究教育センター(自然セ)や申請者のwebサイト上で公開1)2)しているが,ある大学からは使用の連絡をいただいた.これらの動画はYouTubeとも連動しており,アクセス数も多くなっていることがわかる.本教材はあらゆる学部や大学で,さらに大学生や高校生の自主学習にも活用可能な教材となりうるだろう.

成果・今後の展望・計画等

オンライン教材としては,実験手順を示して,頭の中で実験操作をイメージしてもらう方法もあるが,実験教育としては不満が残る.教員が実験をするところをリアルタイム映像で見てもらうか,事前に撮影した実験動画を見てもらい,バーチャルで実験をすることで,体験してもらうしかないであろう.しかし,リアルタイム映像は,昨年度の春学期のようにキャンパスが閉鎖した状態では無理であるし,現在のように,いつ感染するかわからないような状況では,担当教員が授業を運営できる保証もない.オンライン実験動画があることが望ましい.
昨年度に引き続き,プロジェクトが認められたことで,また,昨年度は多くの学部・
教員がこのプロジェクトに参加したことで,今後,対面授業が行えず,オンラインの実験授業を余儀なくされた場合の教材が数多く作成できた.
教材の一部は一般公開しているので,あらゆる学部や大学,高校で活用可能であり,他大学のオンライン授業にも貢献することができるアーカイブが作成できた.実際に,活用の報告もあった.
また,実験器具や装置の映像とその解説,操作法の動画については通常の授業でも学
生の予習復習において活用できる.効率的な学習ができ,教育効果が期待される.実験経験の少ない学生や生徒にとって,実験操作や内容をイメージすることができ,理解の助けになる.さらに,注意点を示すことで実験における危険や事故の防止,廃液や排気による環境破壊の防止にも役立つ.初めて扱う器具や装置,操作法はもちろんのこと,前回の使用から期間が空いてしまっても,映像で復習することで,記憶に定着させやすい.現代の学生にフィットした教育ができ,効果的な学習が促進されるだろう.実験動画は今回のようなオンライン授業で活用できるだけでなく,TAの予習や欠席した学生への補講などに役立てることも可能である.
オンライン実験動画の作成は,授業で実際に学生が行う内容とまったく同じ実験を行い,実験者の目線に合わせて撮影した.また,実験内容によってはビデオカメラを2台設置し,温度計などの計測や観察してほしい部分の拡大撮影を同時に行い,これらの動画を同時に視聴できるように編集することによって,実際に実験を行っているような臨場感のある実験動画を作成した.さらに,カウンター表示をするなどして,時間的な感覚も掴んでもらえるようにした.これによって,作成した動画から測定結果を学生が読み取ったり,観察したりするなど,市販の実験実演動画とは異なり,実験教育を目的とした動画を作成することができた.こういった工夫の一部は,昨年度の取組成果(オンライン教材で学習した学生へのアンケート調査)も踏まえて導入している.
一部の教材についてはweb上の公開に加え,教育関係の学会での発表を行うことで,
外部への発信を行い,新たな教材開発として提案し,慶應義塾大学のみならず,多くの大学の一助となるであろう.
今後,昨年度と同様にアンケート調査を実施し,オンライン教材を用いた場合の学習
効果や教育効果を追跡するとともに,従来の対面型実験授業との比較検証もおこなう.さらに,オンライン用実験動画,追加の実験操作の動画や予習用・復習用教材を順次作成していきたい.授業では,Googleフォームを利用したクイズで理解度の確認も行ったが,動画を視聴して,レポートを出しているだけで,学習成果がみられない学生も一部いた.このような学生のための補習教材を開発したい.

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