自然科学研究教育センター講演会 第21回 終了
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- 日時 :
- 2013年01月29日(火)16:30
16:30~18:00
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- 会場 :
- 慶應義塾大学日吉キャンパス 来往舎1階シンポジウムスペース
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- 主催 :
- 慶應義塾大学 自然科学研究教育センター
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- 講師 :
- 本多 久夫 氏
兵庫大学健康科学部 教授
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- 参加費 :
- 無料 (学生の参加歓迎)
(会場準備の都合上、塾外の方は事前申し込みをお願いします)
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- 対象 :
- 学生・教職員・一般
このイベントは終了しました
講演要旨
遺伝子は形にかかわっていると考えられている。しかし遺伝子から形への具体的な道は途切れたままだった。遺伝子が発現して酵素などのタンパク質ができる。酵素が生体を構成する数々の物質をつくる。最近は細胞の中で遺伝子が、たとえば物質Aを右側に、物質Bを左側に局在させる事実(平面内細胞極性)まで明らかになった。しかしここまでだった。
いっぽ う形から遺伝子へさかのぼるアプローチがある。生物の形は多細胞生物の場合、細胞の動きや変形の結果である。動きや変形のためには、細胞に力を出す分子があってこれが細胞内で片寄った(anisotropic)分布をしていなければならない。我々は力を生じた細胞の集まりが形態形成を行うことを、細胞モデルをつくって例示してきた。細胞の集まりが自己構築により、球形になる・内に空胞のある袋になる・袋が細長く変形する・袋の面が凹んで腸管や気管の形成に向かうなどである。しかし形からさかのぼるアプローチはここで止まっていた。
途切れていた道は、「力を出す分子の局在」が明らかになりつながった。最近神経管形成において力を生じる分子であるミオシンが、平面内細胞極性の機構により細胞内 で特定の方向に配列することが示された。これを踏まえて細胞モデル上で、細胞を特定の方向に収縮させると、細胞配列は神経管形成時に示すパターンになった。やっと道はつながった。細胞モデルの活躍の場がととのった。
プロフィール
京都大学理学部卒業(1965年)のあと、京都大学大学院理学研究科博士課程物理学専攻、
理学博士(京都大学1973年)取得、1975年より鐘紡ガン研究所 (研究員・主任研究員・主席研究員)、
1996年より兵庫大学教授(経済情報学部、健康科学部)
専門領域:理論生物学、物理的生物学研究内容:形態形成を数理モデルにより理解する。著書:『シートからの身体づくり』中公新書1991年、『形の生物学』NHKブックス2010年
センター主催のシンポジウム・講演会について
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