• 現在のページは HOME
  • イベント
  • 自然科学研究教育センター講演会 第52回 のページです。

自然科学研究教育センター講演会 第52回

負の遺伝観を覆すことは可能か―行動遺伝学・進化教育学からの挑戦
2024.10.31
  • 日時 :
    2025年01月16日(木)16:30〜18:00
  • 会場 :
    日吉キャンパス 来往舎 大会議室
  • 主催 :
    慶應義塾大学 自然科学研究教育センター
  • 講師 :
    安藤 寿康 氏
    慶應義塾大学 名誉教授
  • 参加費 :
    無料( 参加申込必要
    当日会場で参加受付も可
    申込期間:11/27 (水) 10時より
  • 対象 :
    学生・教職員・一般

講演要旨

ヒトも生物の一員であるから、心身問わずそのあらゆる形質に遺伝の影響が見出せることは、地球が丸いのと同じように当然の事実である。にもかかわらず、特にヒトの心理的・行動的形質に関しては、それを認めることが差別の正当化や優生学・優生思想につながるとして、近代の社会科学や政治思想においてはタブー視され続けられてきた。差別を正当化してはならないのは人倫の基本である。しかしそのために遺伝の科学的探究そのものを悪とみなす「負の遺伝観」、あるいはエピジェネティクスなどを強調して遺伝要因を環境との相互作用の中で相対化させる発生生物学的生命観も知的欺瞞と思われる。行動に及ぼす遺伝の影響を知る手掛かりとなる双生児法による行動遺伝学研究や、最近のGWASとそれを用いたpolygenic scoreの研究をふまえ、さらに脳の能動的推論や教育の進化的機能を考慮すると、遺伝要因の心理的・行動的形質への影響の確率論的ふるまいは、社会的存在としてのヒトの生活史や社会形成のダイナミズムにおいて重要な機能を担っていることが理解でき、この「負の遺伝観」のイデオロギーを中和して、科学的に健全な方向に向かうことが期待できる。とはいえ、依然として人々に根強く巣くう「遺伝=親子間の形質の伝達(類似性)」「遺伝=宿命的決定論」といった素朴遺伝観の中にその知見を投げ込むことが、「新しい優生学」を助長する危険も否めない。こうした状況で、科学者や科学メディアがどうふるまうべきか、みなさんと考えたい。

申込方法

フォーム https://forms.gle/6qRvmN62VBNhj1Q17からお申込みください。

 申込期間
11月27日(水)午前10時~

プロフィール

安藤 寿康 氏
安藤 寿康 氏
慶應義塾大学 名誉教授
1958年東京都生まれ。1981年慶應義塾大学文学部卒業、1986年同大学大学院社会学研究科博士課程修了。2023年まで同大学文学部教授。教育学博士。現在、同大学名誉教授。専門は行動遺伝学、教育心理学。進化教育学。大規模な双生児コホート研究により、遺伝と環境が認知能力やパーソナリティに及ぼす研究を行うとともに、教育の進化的・脳科学的基盤にも関心を広げ、「教育学を生物学にする」という野望(妄想?)を抱いている。著書に『なぜヒトは学ぶのか』(講談社現代新書, 2018)、『能力はどのように遺伝するのか』(ブルーバックス, 2023)、『生まれが9割の世界をどう生きるか』(SB新書, 2022)、『教育は遺伝に勝てるか?』(朝日新書, 2023)、『運は遺伝する』(橘玲との共著、NHK出版新書, 2023)などがある。

センター主催のシンポジウム・講演会について

当センターの活動の一環として、シンポジウム・講演会を年3〜4回程度開催しています。その目的は、多分野にまたがる自然科学の相互理解を深め、研究の推進と教育の質の向上を図ることにあります。参加費は無料です。特に指定のない場合、聴講の対象に制限はなく、事前申込は不要です。ただし、取材の場合は事前に許可を取って下さい。

天災・交通事情など予期せぬ事態により変更・中止となる場合がございます。
その場合、本ウェブサイトで告知しますので、事前にご確認下さい。

問合せ先:慶應義塾大学 自然科学研究教育センター 事務局 (日吉キャンパス来往舎内)
〒223-8521 横浜市港北区日吉 4-1-1
office@sci.keio.ac.jp

Page Top