自然科学研究教育センター講演会 第36回 終了
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- 日時 :
- 2016年10月20日(木)16:30〜18:00
16:30~18:00
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- 会場 :
- 日吉キャンパス 来往舎2階 大会議室
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- 主催 :
- 慶應義塾大学 自然科学研究教育センター
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- 講師 :
- 垂水 雄二 氏
科学ジャーナリスト・翻訳家
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- 参加費 :
- 無料(申込不要)
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- 対象 :
- 学生・教職員・一般
このイベントは終了しました
講演要旨
長年にわたって科学書の編集および翻訳にたずさわってきた経験から、科学コミュニケーションにおける問題点を、とくに学術用語の翻訳を中心にして論じる。科学にかぎらず、外来の概念や術語の翻訳を異文化コミュニケーションととらえることによって、科学コミュニケーションとの比較が成立する。どんな言葉も多様な意味を含んでいるので、翻訳においても、科学啓蒙においても、一つの言葉をめぐって、送り手と受け手のあいだに、意味のズレや歪曲が起こりうる。とりわけ、科学の世界では、用語が一般の読者に大きな誤解を与える危険性のあることを,具体的な例をあげて説明する。たとえば、生物学における重要な概念である「遺伝子」の意味は、遺伝学・分子生物学の発展にともなってしだいに変わっていき、現在でも、非常に多様な意味がある。にもかかわらず、多くの読者は、それを決定論的な要因であると誤解し、「幸福の遺伝子」といった誤った使われ方が流布している。
次に、科学コミュニケーションで不都合な事態が起きる原因を、発信者である科学者、伝達者であるジャーナリストやコミュニケーター、受け手である一般読者および聴衆、それぞれの立場について考える。ここでは、人間の理解のメカニズムの裏に潜む誤解の誘因が指摘される。
プロフィール
生物学、とくに進化論関係の著作の翻訳および著述。著書:
『悩ましい翻訳語──科学用語の由来と誤訳』八坂書房、2009
『厄介な翻訳語──科学用語の迷宮をさまよう』八坂書房、2010
『進化論の何が問題か──ドーキンスとグールドの論争』八坂書房、2012
『科学はなぜ誤解されるのか──わかりにくさの理由を探る』平凡社新書、2014ほか翻訳:
リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』(共訳)、紀伊國屋書店、1992
ジョナサン・ワイナー『時間・愛・記憶の遺伝子を求めて』早川書房、2001
リチャード・フォーティ『三葉虫の謎』早川書房、2002
ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史』みすず書房、2005
リチャード・ドーキンス『祖先の物語』小学館、2006
リチャード・ドーキンス『神は妄想である』早川書房、2007
ニール・シュービン『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト』早川書房,2008
オレン・ハーマン『親切な進化生物学者』みすず書房、2011
デイヴィッド・N・レズニック『21世紀に読む「種の起原」』みすず書房、2015ほか多数
センター主催のシンポジウム・講演会について
当センターの活動の一環として、シンポジウム・講演会を年3〜4回程度開催しています。その目的は、多分野にまたがる自然科学の相互理解を深め、研究の推進と教育の質の向上を図ることにあります。参加費は無料です。特に指定のない場合、聴講の対象に制限はなく、事前申込は不要です。ただし、取材の場合は事前に許可を取って下さい。
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その場合、本ウェブサイトで告知しますので、事前にご確認下さい。
問合せ先:慶應義塾大学 自然科学研究教育センター 事務局 (日吉キャンパス来往舎内)
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