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2010年自然科学研究教育センターシンポジウム 終了

「~自然における色や形のしくみ~」
2010.11.19
  • 日時 :
    2010年11月19日(金)14:04
    13:00~17:40
  • 会場 :
    慶應義塾大学 来往舎1階シンポジウムスペース
  • 主催 :
    慶應義塾大学 自然科学研究教育センター
  • 参加費 :
    無料 (学生の来場歓迎)
        (会場準備の都合上、塾外の方は事前申し込みをお願いします)
  • 対象 :
    学生・教職員・一般

このイベントは終了しました

趣旨

2010年シンポジウムのテーマは,自然科学のあらゆる分野に関連するものとして,色や形に関するものや現象をとりあげることにした。講師を外部から招いて講演していただき,それぞれのトピックスをわかりやすく解説していただく。それを通して,自然における不思議さを再認識し,また幅広い分野にまたがる自然科学の相互の関連性についても概観する場としたい。

プログラム

13:00~13:10 開会のあいさつ
青木 健一郎 氏(慶應義塾大学  自然科学研究教育センター 所長, 日吉物理学教室  外部リンク(新しいウインドウが開きます) , 経済学部  外部リンク(新しいウインドウが開きます) ・教授)

13:10~14:10  講演1 「モルフォ蝶が語るナノの世界」
木下 修一 氏( 大阪大学大学院生命機能研究科  外部リンク(新しいウインドウが開きます)教授)

モルフォ蝶は中南米に生息する蝶で、その輝くような青色のため100年以上も前から科学者の注目の的であった。この青色は色素の色ではなく、純粋に光とナノ構造が織りなす構造による色である。その微細構造が明らかになったのは今から70年ほど前の電子顕微鏡観察からであるが、本当の意味でその発色機構が分かってきたのはこの10年ほどのことである。

モルフォ蝶は中南米に生息する蝶で,その輝くような青色のため100年以上も前から科学者の注目の的であった。この青色は色素の色ではなく,純粋に光とナノ構造が織りなす構造による色である。その微細構造が明らかになったのは今から70年ほど前の電子顕微鏡観察からであるが,本当の意味でその発色機構が分かってきたのはこの10年ほどのことである。

モルフォ蝶の翅には薄板状の鱗粉が敷き詰められているが,発色は鱗粉上に約1ミクロン間隔で並んだリッジと呼ばれる筋に起因している。この筋には200ナノメートル間隔の棚が数段,左右互い違いに付いていて,光の干渉による青色発色を示すと同時に,光の回折により異方的な拡散光を放つ仕組みになっている。さらに,鱗粉下部にメラニン色素を配置し,発色に寄与しない色の光を吸収して青色のコントラストを上げていることや,発色する鱗粉の上に別の透明な鱗粉を配置し,その異方的な反射により艶消しを行っていることなどが明らかになってきている。

最近では,FDTD法による計算の結果,左右互い違いに付いた棚構造が青色の光を効率よく後方に反射するのに役立っており,また,リッジが林立することで偏光解消に役立っていることなどが明らかになってきた。このようにモルフォ蝶は私たちの知らないナノ世界の秘密を次々と語り続けているのである。

14:10~15:10  講演2 「 生物発光を源流とする化学発光-高効率化の過程から垣間見える発光のメカニズム-」
松本 正勝 氏( 神奈川大学理学部  外部リンク(新しいウインドウが開きます)教授)

 ホタルをはじめ生物の発する光は古くから人々の心を惹きつけてきた。これら生物の発光が「どのような仕組みで」光を放つのか,今ではそのあらましが分かってきている。その多くに共通しているのが高エネルギー分子,1,2-ジオキセタン誘導体,を発光の要としているという点である。このような生物発光の研究を源流としてジオキセタン化学は,合成化学,構造化学,そして生物発光や化学発光に対する興味から,ここ40年にわたり発展してきた。この前半20年ほどの期間に多数のジオキセタンが創出されているが,これら合成化合物は殆ど発光せず,効率の良い生物発光との大きな食い違いが長らく謎であった。これを打破するきっかけとなったのが分子内電荷移動に誘発されるジオキセタンの分解(Charge-transfer-induced decomposition: CTID)である。今では,ホタルやオワンクラゲなどの発光においても高エネルギー中間体,ジオキセタノン,がCTID機構により分解すると信じられている。このような背景のもとに,われわれも高効率化学発光化合物創出を目指して研究を行ってきている。本講演においてはジオキセタン型化学発光の進歩,およびホタルの色調調節と“生物の発光は何故に高効率か?”についてジオキセタンの化学励起過程の視点から述べる。

15:30~16:30  講演3 「生き物のかたち、ホヤのかたち」
西田 宏記 氏( 大阪大学大学院理学研究科  外部リンク(新しいウインドウが開きます)教授)

この講演では,生き物のかたちについて考えてみたいと思う。分類上近い動物はよく似た形をしている。我々は犬と猫の区別ができる。たとえ,始めて見る犬でも犬と判定できるだろう。また,魚という大きなくくりでもそれが魚であることを判定できる。脊椎動物というくくりでもしかり。生物学者が分類をするときは外形ではなく,体の内部の構造や,器官の配置も考慮している。これを総じて体制(Body Plan)と呼んでいる。そして,長い時間をかけて体制は進化していく。共通性を保持しつつ,多様性を産み出しながら。

私は,ホヤという生き物を用いて胚発生を研究しているのだが,ここで,一つの重要な問題がある。将来の体のかたちは胚発生によって形成される。よって,胚発生の進化はかたちの進化の源になっている。しかし,進化過程では,発生のしくみに対してどのような淘汰がかかっているのかがはっきりしていない。胚発生は,非常に複雑な過程であり,そのしくみを少しでも変更すると大きな変更が将来の体に生じてしまう(そして破綻する可能性がある)。よって,胚発生のしくみには強い淘汰圧がかかっており,進化の過程で非常に変わりにくいという考えがある。一方,成体になったとき実際に機能する体のかたちや臓器の配置が保たれるかぎり,それまでの胚発生過程は容易に変更可能であるとの考えも成り立つ。進化の淘汰圧は何を対象としているのだろうか。ホヤを用いた我々の解析結果を他の動物の結果と合わせて考えると,どうやら,初期発生に関しては後者が正解らしいと考えられた。

16:30~17:30  講演4 「雪と氷の結晶の形を探る-宇宙実験からのメッセージ-」
古川 義純 氏( 北海道大学低温科学研究所  外部リンク(新しいウインドウが開きます)教授)

雪や氷の結晶の形は,その精緻で整った対称性のため,私たちの目に触れる自然の創造物のなかでも最も美しいもののひとつであろう。この美しい形がどのようなしくみで生成されるのかを探るには,結晶の表面での分子の挙動から肉眼でも観察できるパターン発展や結晶の外での流れの効果まで,幅広いスケールで現象を追う必要がある。特に,雪や氷の結晶では,結晶の外部に生じる対流の効果がそのパターン発展に重大な影響を与える。このため対流の効果がない無重力環境で,結晶の成長実験を行うことは極めて重要である。

私たちは,国際宇宙ステーション「きぼう」において,氷の結晶のパターン形成を詳細に観察することを目指して,宇宙実験を行った。その実験はどのようにして行われるのか,そしてどのようなことが分かるのかを紹介する。

17:30~17:40 開会のあいさつ
長谷山 彰 氏( 慶應義塾研究担当常任理事  外部リンク(新しいウインドウが開きます) )

センター主催のシンポジウム・講演会について

当センターの活動の一環として、シンポジウム・講演会を年3〜4回程度開催しています。その目的は、多分野にまたがる自然科学の相互理解を深め、研究の推進と教育の質の向上を図ることにあります。参加費は無料です。特に指定のない場合、聴講の対象に制限はなく、事前申込は不要です。ただし、取材の場合は事前に許可を取って下さい。

天災・交通事情など予期せぬ事態により変更・中止となる場合がございます。
その場合、本ウェブサイトで告知しますので、事前にご確認下さい。

問合せ先:慶應義塾大学 自然科学研究教育センター 事務局 (日吉キャンパス来往舎内)
〒223-8521 横浜市港北区日吉 4-1-1
Tel: 045-566-1111(直通) 045-563-1111(代表) 内線 33016
office@sci.keo.ac.jp

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