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教育フォーラム 終了

学生の興味がわく実験教育をめざそう!―論理的思考力を身につける現代の実験教育―
2019.09.09
  • 日時 :
    2019年09月09日(月)13:00〜18:00
    13:00~18:00
    13:30より開催いたします.台風による交通機関の乱れのため,開催時刻を30分繰り下げます.
  • 会場 :
    日吉キャンパス 来往舎 1階 シンポジウムスペース
  • 主催 :
    慶應義塾大学 自然科学研究教育センター
  • 講師 :
    風間直樹 氏
    ベネッセi-キャリア 教育事業本部 部長
    久保田真理
    慶應義塾大学 医学部 化学教室 専任講師
    石船 学 氏
    近畿大学 理工学部 応用化学科 准教授
    小野裕剛
    慶應義塾大学 法学部 生物学教室 准教授
    江村伯夫 氏
    金沢工業大学 情報フロンティア学部 メディア情報学科 准教授
    中村教博 氏
    東北大学 高度教養教育・学生支援機構 学際融合教育推進センター 教授
  • 対象 :
    教職員・学生・教育関係者
  • 定員 :
    120名

このイベントは終了しました

連絡先

教育フォーラム事務局 koeduforum★gmail.com(星を @ に変換)
久保田真理(慶應義塾大学 医学部 化学教室)shinly★keio.jp(星を @ に変換)

趣旨

大学の実験教育における問題点とは何か? 論理的思考力を育むために新しい実験教育を取り入れている授業担当者・開発者に取組について紹介していただき,現代の学生にフィットした実験教育を行うにはどうすべきか,その質の向上を目指して議論する。

プログラム

講演1. 『外部アセスメントから見る初年次での思考力育成の必要性』
風間直樹 氏(ベネッセi-キャリア 教育事業本部 部長)

講演2. 『思考力を育むPBL型実験―頭もアクティブに―』
久保田真理(慶應義塾大学 医学部 化学教室 専任講師)

講演3. 『近畿大学理工学部応用化学(JABEE認定プログラム)における課題合成実験 for PBLの実施事例紹介』
石船 学 氏(近畿大学 理工学部 応用化学科 准教授)

講演4. 『役割演技型実験レポートを用いた文系大学生向け自然科学実験の展開』
小野裕剛(慶應義塾大学 法学部 生物学教室 准教授)

講演5. 『自ら考え行動する技術者を育成するPBL型科目群「プロジェクトデザイン」』
江村伯夫 氏(金沢工業大学 情報フロンティア学部 メディア情報学科 准教授)

講演6. 『融合型理科実験による自然理解と論理的思考: これまでの経緯とこれから』
中村教博 氏(東北大学 高度教養教育・学生支援機構 学際融合教育推進センター 教授)

総合討論

情報交換会

フォーラム終了後に情報交換会を行います。
時間:18:00~20:00
会費:4000円

協力

ベネッセi-キャリア

助成

本フォーラムの一部は,一般財団法人大学IR総研の助成(2018-2019年度)を受けて実施します。

講演要旨

『外部アセスメントから見る初年次での思考力育成の必要性』(風間直樹 氏)

 大学の実験教育は多くの大学で取り組まれ,事例も充実している。一方,この数年でさらに社会環境や学生の気質も変化し,改めて内容を見直すタイミングが来ているのではないだろうか。今回は全国の大学にサービスを提供している民間企業として,大学および学生を取り巻く環境の変化,大学教育における思考力育成の必要性と課題をご報告し,情報交換を行いたい。
 ベネッセi-キャリアでは,年間約25万人の学生にアセスメントを実施しており,うち4割は入学直後に受検されている。その中で近年最も多く導入を頂いているのが,思考力アセスメント「GPS-Academic」である。今回は,この「GPS-Academic」の全国データを用いて大学生における思考力の特徴,育成のポイントをご説明したい。新入生のデータでは,「多くの学生が,テストで与えられる情報をそのまま読み取る力はあるものの,その情報を疑うことをせず,鵜呑みにしている」というデータを提示する。在校生のデータでは,思考力が高い学生と低い学生にどのような学修経験としての差があるかを提示することで,思考力育成の参考にしていただきたい。
 これらの情報を通して,今回のテーマである「論理的思考力を身につける現代の実験教育」を議論する一助になればと考えている。

『思考力を育むPBL型実験―頭もアクティブに―』(久保田真理)

 「論理的思考力」を育成することは,現代の大学教育における最重要課題と考えている。そこで,思考力を養うことを意識して授業を展開している。本講演では,慶應義塾大学医学部の1年生を対象とした化学実験での取り組みについて紹介する。現代の大学生は,高校時代にほとんど実験の経験がない。また,本学部では,化学実験は1年間(隔週)の授業である。このような背景のもと,限られた授業時間の中で,化学実験のマナーの修得や安全教育を徹底しつつ,思考力を向上させる授業運営を考えた。さらに,学習の成果を測ったり,プレゼン形式で発表させたりすることで,取り組みを総括することができるプログラムとした。
 我々は『頭もアクティブに』をスローガンに,2012年度から春学期の実験にPBL型実験を導入してきた。学生が能動的に自ら考えながら,実験に取り組むことができるように,「実験方法を示さず,自分たちで考えた方法で実験を行う」手法である。3~4名のチームで実験に先立ち,実験テーマについて調査し,あらかじめ方法を考えてくるのである。2コマ×4回の授業時間で,与えられた課題に取り組むことができるテーマをすでに二つ開発し,実践した。「金属イオンの分離分析」と「旋光性と旋光度を利用した反応速度」の二つである。これらのテーマの具体的な方法と成果,問題点およびその改善策について紹介する。

『近畿大学理工学部応用化学(JABEE認定プログラム)における課題合成実験 for PBLの実施事例紹介』(石船 学 氏)

 当学科では,2004年度から第3学年の学生実験に,『課題合成実験 for Project-Based Learning』を導入しています。この実験プログラムでは,担当教員・ティーチングアシスタント(以下,教員スタッフ)が,例えば,ある有機化合物を課題化合物として提示し,学生は,それらを選択して,7名前後の学生グループで,合成実験を行います。従来の学生実験のように,教員が細かな実験手順書を提供するのではなく,学生グループ主体で,まず,図書館,文献データベース等を駆使して,合成ルートおよび関連文献の調査を行います。次に調査した内容について,教員スタッフがオブザーバー・アドバイザーとなり,ショートプレゼンテーション等も交えて,グループ内でディスカッションの機会を持ちます。続いて,具体的な実験手順書を作成し,教員スタッフと連携して,試薬の発注,器具の準備等を行い,いよいよ合成実験を実施します。実験は,必ずしも目的化合物の合成に成功することが重要なのではなく,結果が計画通りに得られなくても,直面する問題をその都度どのように解釈し,解決するかという点を最も重要視し,教員スタッフはその良き助言者となるよう努めます。実験終了後は,学生グループ内で分担して,報告書・プレゼンテーション資料を作成し,最終的に,クラス全体で発表会を行い,他の学生グループとのディスカッションを行います。これらの実施例や評価方法,これまでに持ち上がった問題点やその改善例などをできる限り具体的に紹介させていただきたいと思います。

『役割演技型実験レポートを用いた文系大学生向け自然科学実験の展開』(小野裕剛)

 私たち自然科学の教員は,そのおもしろさ惹かれて自発的にこの分野に足を踏み入れた。だから,今から思えば大して工夫されていたわけではない昔の学生実験(恩師の先生方,ごめんなさい)でもやる気に燃えて取り組むことができていたし,それが当たり前だと思ってきた。
 しかし,教員として担当することになった文系学生の学生実験現場に渦巻いていたのは学生の不満と投げやりなレポートであった。彼らにとって自然科学科目は「般教」であり,「卒業に必要な単位だから」という理由で履修する者が大半である。そういう学生たちに,我々理系の教員が受けてきた「理系向けの学生実験」のスタイルを強要しても,やる気を引き出したり,思考力・論述力の育成に役立てたりすることは難しい。PBL方式はよい解決策だが,学生数と指導者の負担を考えるとその導入は困難を極める。
 これまでの実験形式を生かしつつ改善できるポイントは何か。私は「学生が教員に学生実験の成否を報告する形式のレポート」の設定に問題があると考えた。これを「仮想の立場で仮想の研究結果を報告する演技」に変換することで,「その時代にその立場だったらどのようなレポートを書くべきなのか」を考えさせ,論述能力向上につなげることができると考えた。本講演では,そのような考え方に基づいて開発された「役割演技型実験レポート」を使った学生実験の実例をあげながら,その効用をお話ししたい。

『自ら考え行動する技術者を育成するPBL型科目群「プロジェクトデザイン」』(江村伯夫 氏)

 金沢工業大学では,自ら考え行動する技術者の育成を目指し,PBL型授業「プロジェクトデザイン」をカリキュラムの基幹科目として実施している。これは,問題の発見,解決方法の創出,具体化,検証の4つのプロセスを5~6名を1チームとするグループワークによって実践的に学ぶ科目群である。本学では,1年次前学期から2年次後学期までの2年間に渡ってプロジェクトデザイン教育を継続的に行うことにより,プロジェクトの遂行のために必要な知識や論理的思考力のみならず,コミュニケーションスキルやリーダシップなど実社会に求められる人間力を養う。昨年度からは,学科毎の専門性や特色を活かすべく授業内容を一新したほか,複数の学科の学生による混成チームによって授業を行うなど,新しい試みに取り組んでいる。
 本講演では,プロジェクトデザイン教育の理念や特色について述べるとともに,ユニークな取り組みの例として,情報フロンティア学部メディア情報学科の授業内容について紹介する。

『融合型理科実験による自然理解と論理的思考: これまでの経緯とこれから』(中村教博 氏)

 東北大学では,2004年より全ての理科系学部の初年次学生(理,医,歯,薬,工,農学部)を対象とした融合型の理科実験科目「自然学総合実験」を,毎年1700名前後の学生に対して必修科目として開講している。この科目は,専門教育に向けての基礎実験技術の習得よりも学修の基盤形成を確立することを目的として,“論理的思考能力の育成”,“新しいことに挑戦する意欲の開拓”と“科学的文章を書く能力の育成”を目標に掲げている。近年,大学入試問題等をパターン化して正解を得ることに慣れた学生も多く,自分で「なぜ」を思考しない学生がふえてきているため,自分の“頭”で実験結果を論理的に整理して説明し,試行錯誤の過程を経てある結論を導く経験をしてもらいたい。そこで,本科目は物化生地のディシプリンの枠を取り払った融合型の理科実験として,あるテーマをいくつかの学問領域から多次元的に捉えることで,複雑な現象の本質や仕組みを知り,自分の知識や見方を広げ,統一的な理解へとつなげることを狙いとして授業設計が行われている。例えば,“リンの分析による広瀬川の水質評価”ではリンの化学分析や地学的素養から地域の環境理解を考える。また,“弦の振動と音楽”ではギターをもちいて,音階には純正律と平均律があることを学び,そこから音楽(音階)にも普遍性(自然法則)が存在することを理解することで,自然を論理的に理解する思考方法を学ぶ。講演では,融合型理科実験のコンセプトの説明に加えて,学生と教員側への有効性と今後の改革の方向性についても述べる予定である。

プロフィール

風間直樹 氏
ベネッセi-キャリア 教育事業本部 部長
入社以来,高校・大学の教育改革支援を担当。
近年は,学修成果の可視化や高大接続に関する大学向け講演会,勉強会を多数実施。
久保田真理
久保田真理
慶應義塾大学 医学部 化学教室 専任講師
1990年 慶應義塾大学理工学部化学科卒業
1992年 慶應義塾大学大学院前期博士課程理工学研究科化学専攻修了
1992年 慶應義塾大学助手(医学部)
1997年 慶應義塾大学大学院後期博士課程理工学研究科化学専攻修了 博士(理学)
2003年 慶應義塾大学専任講師(医学部) 現在に至る
所属学会:
日本化学会・IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry),初年次教育学会,大学教育学会,日本リメディアル教育学会,日本サイエンスコミュニケーション協会,日本科学教育学会,日本理科教育学会,日本味と匂学会,におい・かおり環境協会,日本コンピュータ化学会
著書:
“興味が湧き出る化学結合論 ―基礎から論理的に理解して楽しく学ぶ―”,共立出版,(2014年)
石船 学 氏
石船 学 氏
近畿大学 理工学部 応用化学科 准教授
平成5年3月 京都大学大学院工学研究科合成化学専攻 博士後期課程修了・学位取得
      博士(工学)Exploitation of New Synthetic Reactions by Means of Cathodic Reduction
平成4年-平成5年 日本学術振興会特別研究員
平成6年 近畿大学助手
平成12年-平成13年 ドイツミュンスター大学有機化学研究所客員研究員
平成14年 近畿大学講師
平成17年6月 電気化学会 有機電子移動化学奨励賞 受賞
平成20年 近畿大学准教授 現在に至る
小野裕剛
慶應義塾大学 法学部 生物学教室 准教授
昭和62年 東北大学理学部生物学科卒業
平成5年 東北大学大学院理学研究科博士課程修了 博士(理学)
平成5年 三菱化成生命科学研究所 特別研究員
平成6年 慶應義塾大学法学部助手
平成9年 同 専任講師
平成13年 スタンフォード大学へ在職留学
平成15年 慶應義塾大学へ復職
平成28年 同 准教授 現在に至る
所属学会:
日本動物学会・日本色素細胞学会・日本分子生物学会・日本鳥学会
江村伯夫 氏
江村伯夫 氏
金沢工業大学 情報フロンティア学部 メディア情報学科 准教授
2002年同志社大学工学部電子工学科卒,2008年同大学大学院工学研究科知識工学専攻博士課程修了,博士(工学)。日本学術振興会特別研究員,(独)産業技術総合研究所特別研究員を経て,2011年金沢工業大学情報フロンティア学部メディア情報学科講師。2018年より現職。専門は,音楽情報処理,音楽知覚認知。特に,和音聴取時に覚える印象の定量化,楽器演奏のグルーヴ感の解明に関する研究に従事。金沢工業大学赴任時より本学のPBL型科目群「プロジェクトデザイン」に興味を持ち,現在授業内容の立案や運営に携わっている。
中村教博 氏
東北大学 高度教養教育・学生支援機構 学際融合教育推進センター 教授
1998年東北大学大学院理学研究科地学専攻博士課程修了。 同大学総合学術博物館助手, 大学教育センター助手, 地学専攻准教授を経て, 高度教養教育・学生支援機構教授。
専門分野:地球惑星科学, 古地磁気学
学位:博士(理学)
所属学会:日本地質学会, 地球電磁気・地球惑星圏学会など

センター主催のシンポジウム・講演会について

当センターの活動の一環として、シンポジウム・講演会を年3〜4回程度開催しています。その目的は、多分野にまたがる自然科学の相互理解を深め、研究の推進と教育の質の向上を図ることにあります。参加費は無料です。特に指定のない場合、聴講の対象に制限はなく、事前申込は不要です。ただし、取材の場合は事前に許可を取って下さい。

天災・交通事情など予期せぬ事態により変更・中止となる場合がございます。
その場合、本ウェブサイトで告知しますので、事前にご確認下さい。

問合せ先:慶應義塾大学 自然科学研究教育センター 事務局 (日吉キャンパス来往舎内)
〒223-8521 横浜市港北区日吉 4-1-1
Tel: 045-566-1111(直通) 045-563-1111(代表) 内線 33016
office@sci.keo.ac.jp

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