細胞の行動と認知―実例の分類・解析と概念的基盤の整備
細胞の振舞いを行動と形容し、認知概念を適用した記述・説明の妥当性を検討するために、様々な実例を分類・解析しながら、そうした記述・説明法の概念的基盤を整備する。
目的
①細胞の振舞いを行動と形容し、認知概念を適用して記述・説明する研究の妥当性を明らかにする。
②そのために、棘皮動物ヒトデの個体発生を実例とした研究を遂行する。それと並行して、プロジェクトメンバーが過去に慶應義塾の資金で構築した「細胞行動データベース」の実例を分類・解析し、またこれを拡張・活用する新しい方法を模索する。
③細胞(単細胞生物のそれであれ、多細胞生物を構成するそれであれ)に「行動」や「認知」の概念を適用することが可能であり、また必要であるという主張の是非は、これらの概念をどのように捉えるかにかかっている。そこで本研究プロジェクトでは「行動」および「認知」という概念に関する基礎論的考察をおこない、細胞にこれらの概念を適用する研究の概念的基盤を整備する。
内容
上記①が本研究プロジェクトの主要な目的であり、これはその下位目的である②および③の目的を達成することによって果たされる。それゆえ、本研究プロジェクトの内容は②および③に分けて記述できる。
②の目的を達成するための研究は二つのパートに分かれる。一つ目は、棘皮動物ヒトデの個体発生現象を細胞の行動と認知という観点から記述・説明することの有効性の検証である。二つ目は、「細胞行動データベース」の実例を分類・解析するという作業のさらなる継続と、データ収集の自動化や「細胞行動データベース」を活用した研究(本研究プロジェクトメンバーによる研究だけでなく、外部の研究者による研究も含む)を支援するツールの構想・試作である。
③の目的は、「行動」および「認知」、さらにそれに関連する諸概念の用法についての(生命科学・行動科学・認知科学分野における)基礎論的な先行研究のサーベイを踏まえ、細胞現象の研究にふさわしい用法を提案することによって達成される。