ハチクマ(タカ目タカ科)の総合的研究

ハチクマは羽毛を中心とした形態において種内変異が多様であることに加え、摂食行動や免疫、渡りにおいて特異的な特性を示す。これらの特性を総合的に解析する。

目的

生物には種ごとに特有の形態や行動特性があり、これまではモデル生物を利用して研究が進んできた。しかしながら、モデル生物であるマウスやニワトリの研究だけでは多様な自然界を十分理解できるとはいえない。本研究では種内に形態の多様性を持つハチクマのゲノム解析を行うことでその分子基盤を明らかにすることを目的とする。ゲノム解析の結果は行動(渡り・摂食・免疫)の研究者と共有し、ハチクマという種の総合的な理解を深めることを通じて非モデル生物を用いた生物学の発展に資することを目的とする。

内容

ハチクマは同一種内に多彩な羽毛色と色斑パターンを持つ。羽毛色と色斑はパターン形成時の細胞間情報伝達の結果と考えられる。これまでに我々は羽毛色決定の第一の候補であるメラノコルチン1受容体(MC1R) 遺伝子の解析を行い、暗色個体は多数の塩基置換を持つ特異なMC1Rハプロタイプ(対立遺伝子)を持つことを発見した。また、我々は現在解析中のアグチシグナルタンパク質 (ASIP) 遺伝子は極めて多数の塩基置換を持つ二つのハプロタイプに分類できることを発見しており、これは現在のハチクマという種は比較的近い時代に種間あるいは亜種間の雑種形成など複雑な交配によって形成された可能性を示唆しているのではないかと考えている。2025年度は羽毛色・色斑パターン形成に関与する遺伝子から遺伝的に中立な塩基配列へと解析を展開し、ハチクマという種内での遺伝子多様性を明らかにすることによって、特徴ある形態・行動特性の基盤へと迫りたいと考えている。

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