パラニトロアニリン赤の合成と染色

実験風景

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実験の紹介

実験の目的とねらい

世界で初めて人工染料が作られたのは、1856年のイギリスであり、しかも当時18才の学生だったパーキンが偶然にも紫色の色素を作ったことに始まる。当時は色彩ゆたかな衣類をまとうのは貴族に限られ、さらに紫色を呈する天然の材料は貴重品であった。その後パーキンは染料会社を創った。この頃はまだ、どのような反応が起こり何が生成したのかはわかっていなかった。ドイツでは有機合成の手法が次第に確立していき、1880年頃にバイヤーがインジゴ(青色天然色素)の人工合成に成功している。本実験では、繊維上でカップリング反応をさせてアゾ染料を生成させる。この綿布を染色する実験を通して、有機反応が実生活にも応用されていることを学ぶ。

実験内容

アニリン(またはアニリン誘導体)に塩酸を加えて溶解し、さらに亜硝酸ナトリウムと反応させることによりジアゾニウム塩を生成させる(A液)。一方、水酸化ナトリウム水溶液にβ-ナフトールを溶解させる(B液)。水洗いした綿布をB液に浸し、絞ってからペーパータオルの上に広げ、半乾きの状態にする。細い木の先端にA液をつけ、それを綿布に接触させて文字や絵などを描く。異なるアニリン誘導体から作ったA液を利用すると、「多色刷り」となる。

実験上の注意

<実験開始前の準備>
[使用器具および試薬]
・綿布(さらしを10 cm×6 cm程度に切ったもの)
・ペーパータオル、キムタオル、使い捨て用ビニール手袋
・上皿天秤、薬包紙、ミクロスパーテル
・小さい木片(マッチ棒など)
・ドライヤー
・ピンセット
・ろ紙(カップリング反応確認用)
・p-ニトロアニリン
・α-ナフチルアミン
・アニリン(および駒込ピペット)
・亜硝酸ナトリウム
・β-ナフトール
・3M HCl
・2M NaOH
・氷
個人器具および机上試薬

<実験開始時の注意>
・アニリンあるいはアニリン誘導体(p-ニトロアニリン、α-ナフチルアミン)はどれか1種類について行う。ただし、2種類準備すると、2色刷りができる。
・アニリンは塩酸に溶けるので、加熱は不要である。
・固体の試薬はそれぞれ専用のスパチュラを用いること。(混ざって色が出るのを避けるため)。
・α-ナフチルアミン(紫色)の場合は、特によく加熱して十分に溶解すること。なかなか溶けにくいので溶剤(3M HCl)を多めにする。
・p-ニトロアニリンを十分溶解しないで氷冷すると黄橙色の結晶が析出してしまう。
・同様に、α-ナフチルアミンを十分溶解しないで氷冷すると薄紫色の結晶が析出してしまう。
・綿布に試薬をつけて絞るときに、ビニール手袋を使うこと。

<失敗例>
・指が赤く染まってしまった。(理由:ビニール手袋を使うなどの対策が不十分なため、指にA,B両方の液が付着し、色素ができてしまった)。
・A-1液での加熱による溶解が不充分のため、氷水で冷やしたときに粉末が析出した。
・染めた布が数日後に下地が褐色になってきた。(理由:染色後に石けんで洗わなかったため)。

実験テーマの履歴など

慶應義塾大学日吉キャンパスの文系学生を対象とする化学実験において、この実験テーマが開始されたのは1949年の新制大学(文、経、法、工学部)発足の翌年以降と推定されます。実験操作の内容は参考文献(1)に記載されています。なお、あやまって手や服を染めてしまうと、簡単には色がとれないので注意する必要があります。プラスチック製のビーカーやトレイなども染まりやすいです。

参考文献
(1)「大学課程 一般化学」佐々木洋興、辻岡昭、膳昭之助、大矢徹 共著(オーム社、1968年).有機合成実験[実験15]、pp.278-280.

実験テキスト

file12.パラニトロアニリン赤.pdf


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Last-modified: 2008-12-24 (水) 11:02:24 (96d)