メチレンブルーの酸化と還元

実験風景

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実験の紹介

実験の目的とねらい

別名、青いフラスコの実験とも呼ばれ、酸化と還元の反応をメチレンブルーという色素の色の変化で観察する実験である。湯浴を用いてフラスコ内の温度を上げると、色の変化が速くなり、温度と反応速度との関係がわかる。メチレンブルーは金魚の水カビ病の治療薬としても使われているが、その殺菌効果は相手を酸化することによるものである。(メチレンブルーは還元されやすい)。酸化と還元は電子のやりとりであり、それは「ボルタ電池と燃料電池」のテーマともつながっている。

実験内容

丸底フラスコにメチレンブルー、グルコース、および水酸化ナトリウム水溶液を加える。メチレンブルーは本来青い色素であるが、グルコースによって還元され無色のロイコメチレンブルーとなる。しかし、フラスコを振り混ぜると空気中の酸素によって酸化され、メチレンブルーの青い色にもどる。そのまま放置すると、再び無色になる。この脱色時間(つまり反応の速さ)が振動回数ならびに温度にどの程度依存するかを調べる。またヨウ素デンプン反応の濃青色溶液にビタミンCの粉末を少量加えて、色の変化を観察する。

実験上の注意

<実験開始前の準備>
[使用器具および試薬]
・ウォーターバススターラー(水を8分目まで入れる)
・100 ml 丸底フラスコ
・コルク台(フラスコ立て)
・フラスコ栓(シリコーン栓)
・50 ml 三角フラスコ
・キッチンタイマー
・0.05% メチレンブルー水溶液
・ヨウ素溶液
・グルコース、可溶性デンプン、ビタミンC(アスコルビン酸)
個人器具および机上試薬

[試薬の調整]
・0.05% メチレンブルー水溶液: メチレンブルー0.1 gに水170 ml
・ヨウ素溶液: 日本薬局方希ヨードチンキを水で100倍希釈する。

<実験開始時の注意>
・同一実験台のウォーターバススターラーの電源および昇温開始は時間差をつけるようにする。(昇温開始時にウォーターバス1台あたり最大8 Aの電気が流れる)。
・メチレンブルーの青色が液面付近にはずっと残るので、フラスコの底の方で脱色を判定する。(2回くらい試運転してから、脱色時間を測定する。2分を越えても脱色しない場合は、何か問題あり)。
・各実験の前に必ずフラスコの栓をあける。(酸素を補給し、毎回同じ条件にするため)。
・丸底フラスコに入れたグルコースを十分に水に溶かしてから実験を行なうこと。(良く撹拌せずに実験を開始すると、最初に計った脱色時間が異常に長くなる)。
・脱色の判定を厳しくしすぎると、温度による変化が数値に表れない。
・メチレンブルーの実験のフラスコ内の溶液は時間が経つと色がなかなか消えにくくなり、終点の見分けがしにくくなる。最後には、黄色く変色する。
・ビタミンCの実験は一瞬にして色が変化するので、注意深く観察すること。
・可溶性デンプンは薬さじ(小)で、すり切り1杯で十分。(多いとなかなか溶けない)。

<失敗例>

・青いまま数分たっても色が消えない。(理由:3M NaOH 4 mlのところ、4滴しか入れなかった)。
・温度上昇の効果が反応速度に出なかった。(理由:最初だけフラスコをウォーターバスの中に入れ、あとは振り終わってもウォーターバスの外に出していた。あるいは、脱色の判定が厳しすぎた)。
・栓がはずれて、液が服にひっかかった。(対策:NaOHを使用しているので必ず保護メガネ、そしてフタをよくおさえて振る)。
・ビタミンCを入れる前に色が消えた。(理由:三角フラスコの洗浄およびすすぎ不足のため、前に実験したときのビタミンCが残っていた)。

実験テーマの履歴など

慶應義塾大学日吉キャンパスの文系学生を対象とする化学実験において、この実験テーマは2004年に開始しました。この実験テーマを始めるに当たっては、図書(1)の内容をベースにして、なおかつ、生活や身の周りと関連するものも取り入れるために、ビタミンCも使うことにしました(2)。なお、色素としてメチレンブルーの代わりにインジゴカーミンを使うと、緑、黄、赤の3色が楽しめるそうです(3)。

参考文献
(1)「化学実験とゲーテ」M.Roesky著、戸嶋直樹等訳(丸善2002年).メチレンブルー:医学史を作った染料、pp.66-67.
(2)「もっと化学を楽しくする5分間」 (化学同人2003年).ヨウ素デンプン反応とビタミンC、pp.106-107.
(3)「化学がすきになる実験」宮田光男編 (裳華房1990年).交通信号フラスコ、pp.30-33.

実験テキスト

file04.メチレンブルーの酸化と還元.pdf


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Last-modified: 2008-12-15 (月) 17:20:46 (105d)