ボルタ電池と燃料電池

実験風景

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実験の紹介

実験の目的とねらい

化学反応を利用して電気を取り出す仕組みを化学電池という。ボルタが電池を発明するきっかけとなったのは、2種類の金属を接触させるだけで電気が流れることに気がついたことであった。何組か金属板を重ね合わせるだけで、電子メロディーを鳴らすまでの電圧を作ることができる。これは初めて実験したものにとって、非常なる驚きである。また、最近注目されている燃料電池は、水素やアルコールのような燃料を酸化させて、その反応から得られるエネルギーを熱としてではなく電気として取り出す装置である。燃料電池の実験器を実際に使いながら、その仕組みについて学ぶ。

実験内容

銅と亜鉛(またはアルミニウム)の金属板に濡れたろ紙をはさんだものを1対から5対まで重ねていき、生じた電圧をテスターや電子メロディーを用いて検出する。またボルタ電池を組み立て、電圧を測定する。さらに、可逆性の固体高分子形燃料電池実験器を用いて、光をソーラーパネルにあてて水を電気分解し、それによって生じた水素を使ってプロペラモーターを回す。また、燃料電池自動車模型も走らせる。

実験上の注意

<実験開始前の準備>
[使用器具および試薬]
・銅板、アルミ板または亜鉛板、ろ紙(金属板よりもやや小さめの長方形に切ったもの)、各5枚
・ボルタ電池用銅と亜鉛板、各1枚
・電子メロディー、テスター、ミノムシおよびワニグチクリップ付リード線
・燃料電池実験器とソーラーモーター、およびそれをのせるトレイ
・白熱灯(雨天用)
・燃料電池実験器用ACアダプター(雨天用)
・ティッシュ
個人器具および机上試薬

<実験開始時の注意>
・ボルタの電堆で使う液体は飽和食塩水ではなくて蒸留水でも、電圧はほとんど変わらない。
・テスターや電子メロディーには+極と−極がある。
・ボルタ電池の金属板(Zn)は硫酸につけっ放しにしないこと。(溶けるため消耗が激しい)。
・雨天と晴天では、固体高分子形燃料電池の実験内容が異なる。
・燃料電池自動車模型(H-racer)に用いる水の分解(水素ステーション)は太陽光では時間がかかりすぎるため、乾電池を使う(2分くらいでチャージできる)。ただし、乾電池の消耗が速いので、自動車模型があまり走らなくなってきたら、乾電池をチェックする。
・水素ステーションは、こまめにスイッチをOFFにする。(水素の引火に要注意)。

<失敗例>
・電堆の電圧がでない。(理由:ろ紙がはみ出して、外側の金属板に触っていた。あるいは、ろ紙をはさんでいる2種類の金属板が折れ曲がって接触していた)。
・電圧が十分あるのに、電子メロディーが鳴らない。(対策:電子メロディーの不具合の可能性があるので、交換する)。
・電圧が十分あるのに、ソーラーモーターが回らない。(対策:手で少しプロペラを回してやると動く)。
・電堆の実験で、Al-Cuに比べてZn-Cuの組み合わせの方が電圧が高く出て、イオン化傾向と矛盾する。(理由:実際のアルミ板は酸化皮膜に覆われているため、イオン化傾向にもとづく予想とは一致しない。これは失敗ではなく、実験事実である。ボルタ電池でも、Al-Cuに比べてZn-Cuの組み合わせの方が電圧が高く出る)。

実験テーマの履歴など

慶應義塾大学日吉キャンパスの文系学生を対象とする化学実験において、この実験テーマは2007年に開始されました。可逆型の固体高分子膜形燃料電池実験器を使用します(1)。これにより、光電池を用いて水の電気分解をおこない、その逆反応が燃料電池になることを学びます。また、電池の根本原理を理解する意味で、ボルタの電堆およびボルタ電池の実験も含めました。 ボルタの電堆の実験で、金属板にはさむろ紙を食塩水で湿らせても純水で湿らせても、生じる電圧の差はわずかです(2)。実験後に金属板が錆びやすいので、洗浄して乾燥させるなどの対処が必要です。

参考文献
(1)「Fuel Cell Technology for Classroom Instruction」(ドイツh-tec社2005年).
(2)「新編 化学II」pp.115-117. (数研出版1994年).

実験テキスト

file05-1.ボルタ電池と燃料電池.pdf


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Last-modified: 2008-08-21 (木) 14:45:00 (221d)