* ゾウリムシの飼育法 [#f769a0fd]
RIGHT:SIZE(9){画像をクリックすると拡大表示されます。}
#ref(生物学実験/タイトル画/Tゾウリムシ飼育.jpg,exif,right,wrap,around);
#contents

** はじめに  [#b2b53018]
ゾウリムシは、薄めた麦茶やウーロン茶でも比較的簡単に飼育することができるが、研究の現場では、稲わら培養液やレタスジュース培養液が用いられる。ここでは、稲わら培養液とレタスジュース培養液による飼育方法を記述する。

** 稲わら培養液による飼育法 [#va06609a]
***材料 [#h5a6c1c3]
-''ゾウリムシ('''Paramecium caudatum''')''
-''稲わら'':無農薬のものが望ましい。

***器具 [#p2efe885]
-''鍋''または、''ビーカー''
-''培養瓶'':三角フラスコなど&br;
 (コーヒーの空きビンなどでも良い。)

***手順 [#y57f9e32]
+''ゾウリムシ培養液の調整法''
++稲わら5本程度を約8 cm程度に切る。
++1000 mlの蒸留水が入った鍋に切ったわらを入れる。
++鍋を火にかけ、15分沸騰させる。
++完全に冷ます。
#br
+''ゾウリムシの植え継ぎ''
++約300 mlの容器に冷ました培養液を200 ml入れる([[注1>#attention1]]&aname(attention1r);)。
++ゾウリムシの懸濁液1-2 ml([[注2>#attention2]]&aname(attention2r);)を、i の培養液に入れる。
++蓋([[注3>#attention3]]&aname(attention3r);)をして、直射日光のあたらない室温で培養する([[図1>#fig1]])([[注4>#attention4]]&aname(attention4r);)。
++ゾウリムシを維持する目的ならば、1〜3か月に1回の頻度で植え継ぐ。&br;実習などで、大量にゾウリムシが必要な場合には、必要な日の2週間前くらいに植え継ぐとよい。
#br
|CENTER:&ref(mparamefig1.jpg,,50%);&aname(fig1);|
|CENTER:''図1.稲わら培養液による飼育''|

*** ポイントやトラブルシューティング [#i7eb8100]
- &aname(attention1);[[注1>#attention1r]]:ゾウリムシの餌となるバクテリアの繁殖のために、稲わらを入れたまま培養液として使用する。
- &aname(attention2);[[注2>#attention2r]]:負の走地性のため、水面近くの培養液に、ゾウリムシが集まっているので、この部分をゾウリムシ懸濁液として植え継ぐ。
- &aname(attention3);[[注3>#attention3r]]:密閉せず、通気性のよい状態を保つため、スポンジや紙で蓋をする
- &aname(attention4);[[注4>#attention4r]]:増殖最適温度は、26℃といわれているが、維持する目的なら、室温で増殖した後、10℃くらいの低温で維持する。

**レタスジュース培養液による飼育法 [#n65f5afa]
***材料 [#y70f66c9]
-''ゾウリムシ('''Paramecium caudatum''')''
-''エサ用バクテリア 桿菌 ('''Klebsiella pneumoniae''')''
-''レタス'':無農薬のものが望ましい。
-''CaCO&subsc{3};''
-''グルコース''
-''アガロース''
-''イーストエクストラクト''

***器具 [#zf659972]
-''鍋'':レタスをゆでる時に使用。
-''ピンセット、箸'':レタスをゆでる時に使用。
-''濾紙、キムワイプ®''
-''ビニール袋''
-''乳棒・乳鉢'':乾燥レタスを粉末にする時に使用。
-''乾燥剤''
-''培養瓶'':三角フラスコなど
-''三角フラスコ'':寒天培地、ゾウリムシ培地作成時に使用。
-''オートクレーブ''
-''オーブン''
-''滅菌シャーレ''または、''栓つき滅菌試験管'':バクテリア培養用
-''白金耳'':バクテリア植え継ぎ用

***手順 [#m7039241]
+''乾燥レタス粉末の調整法''
++レタスの葉は、変色した部分や硬く白い部分は除き、よく洗う。
++沸騰水で、30〜60秒茹で、すぐに冷水にとり、その後、水気を切る。
++水切りした葉は、濾紙の上に1枚ずつ丁寧に広げ、キムワイプ®等で水分をふき取る。
++濾紙ごと120℃のオーブンに入れ、焦がさないように完全に乾燥させる。([[注5>#attention5]]&aname(attention5r);)
++乾燥した葉は、乾いたビニール袋に入れ、よくもんで粉にする。さらに、乳棒と乳鉢で細かい均一な粉末する。
++乾燥剤を入れた容器に入れて室温で保存する([[図2>#fig2]])([[注6>#attention6]]&aname(attention6r);)
#br
|CENTER:&ref(mparemefig21.jpg,,50%);&aname(fig2);|
|CENTER:''図2.乾燥レタス粉末 保存瓶と粉末''|
#br
+''レタスジュース培養液の調整法''
++1ℓのフラスコに700〜800mlの蒸留水と乾燥レタス粉末0.5gを加え、加熱し、5分沸騰させる。
++CaCO&subsc{3};少量(耳かき1杯程度)を加え、蒸留水で1ℓにメスアップする。
++アルミ箔で蓋をして、オートクレーブ(121℃、15分)で滅菌する([[図3右>#fig3a]])。
#br
|CENTER:&ref(mparamefig31.jpg,,50%);&aname(fig3a);|CENTER:&ref(mparamefig32.jpg,,50%);&aname(fig3b);|
|>|CENTER:''図3.レタス培養液と'''Klebsiella pneumoniae''' 培養プレート・白金耳''|
#br
+''桿菌('''Klebsiella pneumoniae''' )の培養法''
++アガロース20g、グルコース0.16g、イーストエクストラクト4g([[注7>#attention7]]&aname(attention7r);)を800mlの水に溶かし、121℃15分 オートクレーブにかけ、寒天培地を作る。
++滅菌したシャーレや試験管に寒天培地を分注し、固める。試験管を使用する場合は、試験管の高さの半分くらいまで寒天培地を注ぎ、寒天が固まる前に、試験管の口のほうをやや高くして、横に倒し、スラントをつくる。
++クリーンベンチ内で、'''K. pneumoniae'''を白金耳で寒天面に塗布し室温で培養する([[図3左>#fig3b]])([[注8>#attention8]]&aname(attention8r);,[[注9>#attention9]]&aname(attention9r);)。
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+''ゾウリムシの植え継ぎ''
++餌バクテリアとして'''K. pneumoniae'''の培養容器にゾウリムシ培養液を少量加え、バクテリアを洗い流すようにして、バクテリア懸濁液を作る。
++レタスジュース培養液に、バクテリア懸濁液とゾウリムシを入れる。
++蓋をして、直射日光のあたらない室温で培養する。
++ゾウリムシを維持する目的ならば、1〜3か月に1回の頻度で植え継ぐ。実習などで、大量にゾウリムシが必要な場合には、必要な日の2週間前くらいに植え継ぐとよい。
***ポイントやトラブルシューティング [#ib64aff0]
- &aname(attention5);[[注5>#attention5r]]:オーブンでの乾燥は、場所によって温度ムラがでるため、5〜10分置きに場所を移動させながら、乾燥状態をチェックする。普通10〜30分くらいで乾燥する。
- &aname(attention6);[[注6>#attention6r]]:温度差があると湿気を帯びやすいので、室温で保存する。
- &aname(attention7);[[注7>#attention7r]]:'''K. pneumoniae'''は、最低培地で育つので、グルコースと無機塩類が含まれていればよい。
- &aname(attention8);[[注8>#attention8r]]:乾燥に気をつけて、室温で培養し、2〜3か月ごとに植え継ぐとよい。
- &aname(attention9);[[注9>#attention9r]]:'''K. pneumoniae'''を培養した培地は、オートクレーブにかけ滅菌後、廃棄する。
**参考文献 [#pa35d66a]
重中義信 監修 (1988) 原生動物の観察と実験法、共立出版
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**PDFマニュアル [#r43a118e]
**印刷用PDFマニュアル [#r43a118e]
#ref(ゾウリムシ飼育法.pdf)

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