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無電解めっきとフォトレジスト(鏡の作成)(a)

ガラスのような絶縁体の表面に、化学的に「めっき」する方法を学ぶ。また、フォトレジストを用いて金属膜のパターニングを行い、感光性分子の構造変化とその役割について考える。

実験風景

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実験の紹介

実験の目的とねらい

無電解めっきの方法を使うと、導電性を持たないものや複雑な形状の物質の表面にもめっきを施すことができる。光感応性高分子を用いたフォトレジストは、酸やアルカリから保護したい部分を簡便にパターニングすることができる。これが電子基板回路の作成に用いられていることからもわかるように、ミクロン単位の繊細なパターニングが可能である。今回はこの2つの方法を組み合わせ、各自で好みの模様を入れた手鏡を作成しながら、感光性分子の構造変化とその役割について学ぶ。

実験内容

・ガラス板をクレンザーで洗浄後、センシ液(塩酸ヒドラジンと塩化第一スズの混合水溶液)およびアクチ液(塩化パラジウム水溶液)に交互に数回つける。
・湯浴内のめっき液(硫酸ニッケルなどの混合水溶液)に上記のガラス板を浸し、表面全体に金属を析出させる。
・200°Cホットプレート上で焼き付け(ベーキング)を行う。
・ガラス板の片面にフォトレジスト液を(スピンコートで)均一に塗り、110°Cで固化させる。
・透明フィルムに、黒地に白抜きの原稿(パターン)を作成する。フォトレジストが付いたガラス板の面に、原稿を裏返しにして密着させ、紫外線を照射する。
・現像液にガラス板を浸し、模様が完全に浮き出たら取出す。水洗してから、110℃のホットプレート上で加熱する。
・エタノールをしみ込ませた綿棒で、余分なマスク(フォトレジスト膜)を除去する。
・エッチング液(塩化第二鉄の希硝酸溶液)に入れて、マスクがついていない金属部分を溶かして除去する。水洗い後、ドライヤーで乾燥させて完成。

実験上の注意

<実験開始前の準備>
[使用器具および試薬]
・ホットプレート
・ウォーターバス
・ブラックライト
・PKクランプ(露光用原稿密着器)
・透明シート(OHP用)
・黒マジックインキ
・シャーレ
・大型スライドガラス(76×52 mm)
・ピンセット
・プラスチックの皿
・ペーパータオル
・綿棒
・フォトレジスト液
・センシ用溶液
・アクチ用溶液
・無電解ニッケルめっき用溶液
・現像液
・エッチング液
・エタノール
個人器具

[試薬の調製]
・センシ用溶液(塩酸ヒドラジン0.5 gおよび塩化第一スズ 1 gの1L水溶液)
・アクチ用溶液(塩化パラジウム(II) 0.1 g/L希塩酸(3 mM)水溶液)
・無電解ニッケルめっき用溶液 (硫酸ニッケル6水和物 25 g, 次亜リン酸ナトリウム 20 g, 酢酸ナトリウム 10gの1L 水溶液を硫酸でpH 4.5~5.0に調整したもの)
・エッチング液 (塩化第二鉄(23 wt%)の希硝酸(8 wt%)水溶液)
・フォトレジスト液 (富士薬品工業株式会社 FPPR-200)
・現像液 (富士薬品工業株式会社 FPPR-Dを5~6倍希釈したもの)

<実験開始時の注意>
・センシ液(白色)とアクチ液(黄色)はくり返し使用可能なので、回収して再利用する(ただし、センシ液の方は酸化されやすいため、保存はせいぜい数日程度)。
・その他溶液(めっき液と現像液)は廃液回収する。

<失敗例>
・めっき浴につけても、ガラス板がまったくめっきされない。(→最初にガラスをクレンザーで洗って油膜を除去していないため)
・めっき浴につけても、めっきされない部分が残る。(→ガラスの面を指でもったり、ピンセットで強くこすったりすると跡が残る。ガラスの縁だけがめっきされずに残る場合もあるが、これは原因不明)。
・現像液につけたとき、パターンが出てきたが全部消えてしまった。(→スピンコート後のベーキングを忘れたため)。
・ホットプレートでベーキングしようとしたらガラスが割れてしまった。(→濡れたガラス板を高温のホットプレートにのせると、温度の高低差が生じ、ビーカーの空炊のような状態になり割れる)。

実験テーマの履歴など

慶應義塾大学の文系学生を対象とする化学実験において、この実験テーマを2012年に開始しました。この実験テーマを開発するにあたって、種々の情報を参考にしました。(1,2) 予備実験を行って、紫外線照射や現像条件などを検討しました。その結果も含めて実験の解説をまとめました。(3)

参考文献
(1) 「めっき加工のツボとコツQ&A」 (星野芳明著,日刊工業新聞社,2009年)。
(2) 「レジスト材料」 (伊藤洋著,共立出版,2005年)。
(3)「無電解めっきとフォトレジスト」向井知大、小畠りか、大場茂、慶應義塾大学日吉紀要、自然科学No.52、19–35 (2012年)。
 

実験テキスト

無電解めっきとフォトレジスト pdf (485KB)

鏡の作成-無電解めっきとフォトレジスト

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