本プログラムの概要
背景と目的
慶應義塾大学では文系4学部(文学部、経済学部、法学部、商学部)の学生のための実験を含めた自然科学の講義を設けており、現在1学年あたり4,000人程度いる学生のうち7割程度がこれを履修しています。この少人数グループでの実験重視の講義は新制大学として開設した1949年よりずっと続けています。文系学生のための自然科学実験の意義が広く認知されるようになり、開講する大学は少し増えてきていますが、我々の規模で実施している大学は国内には類を見ません。本取組では、2005年度に採択された特色ある大学教育支援プログラム(以下、特色GP)で改良した伝統あるカリキュラムを発展させ、全学生が確実に総合的な科学的思考力を身に付けられるプログラムや実習教材等を作成します。総合的な科学的思考力とは、実証に基づき論理的に思考し、その結果を論述する能力です。これはまさに実学(サイヤンス)の精神に他ならず、慶應義塾大学では全学生がこれを確実に身に付けることを重視する伝統を持っています。
本取組の目的は、実証に基づいた講義を履修することを通じて、文系学生が自分で独立に分析し判断する能力、そしてそれを論述、口述をもって表現する能力を習得することです。自然科学研究教育センターが中心となって、慶應義塾全体で本取組を推進していきます。
取組内容
これまで、文系学生のために物理学、化学、生物学の実験を含む授業は設置されていましたが、心理学の実験を含む授業は設置されていませんでした。心理学は毎年半期あたり3,000人程度の学生が履修する人気講義です。心理学専攻以外の学生のために心理学の基礎実験を開講しているケースは全国的にも皆無です。本取組では実験を含む心理学の授業を立ち上げ、その成果を情報公開します。
また、過去の特色GPの取り組みを発展させ、課題を発見し、解決方法を探る面白さや楽しさを育み、科学者の偉業を体験的に理解できる課題探求型実験テーマを開発します。
実験を含む授業では科学的な論述を求められる機会が必然的に多く生じます。学生の科学的な論述能力の質を保証するために教材を開発して導入し、指導します。
多様な学生によりきめ細やかに対応していくために、補助的な教材を学生の学習経験に合わせて開発します。それとともに学習成果を把握するために学生の科学リテラシー能力を多面的に測る方法を作り、導入していきます。