イトマキヒトデの受精法
関連実験テーマ:
ヒトデの卵成熟と初期発生(受精・卵割)の観察, など
ヒトデの卵成熟と初期発生(受精・卵割)の観察, など
はじめに
イトマキヒトデの受精法を1. 精子の単離、2. 卵の単離、3. 受精の3項目に分けて記述する。
材料
- イトマキヒトデ(Asterina pectinifera)
試薬
- 1 mM 1-methyladenine:分子量149.15
1 mM 1-methyladenine 溶液 100 ml 1-methyladenine 15 mg 蒸留水 100 ml
- 海水、または人口海水(マリンアートMARINEART®SF-1)300~500ml程度
器具
- ハサミ
- ピンセット
- パスツールピペット
- ビーカー
- 直径9cmガラスシャーレ
- 15ml試験管
- 手回し遠心機
手順
- イトマキヒトデの精子の単離
- オスのヒトデの腕の外皮にハサミを入れ、ピンセットで挟みだすようにして精巣を取り出す。
(ヒトデは、雌雄異体で、その生殖巣は各腕の体腔に1対ずつ存在する。) - 3 mlの海水が入った試験管に、取り出した精巣の一部を入れる。
- ii の海水をパスツールピペットで懸濁することで、精子を海水中に遊離させる。
- オスのヒトデの腕の外皮にハサミを入れ、ピンセットで挟みだすようにして精巣を取り出す。
- イトマキヒトデの卵の単離
- メスのヒトデの腕にハサミを入れ、オスの精巣と同様に卵巣を取りだす。
- 2腕分の卵巣を10 mlの海水が入った50mlビーカーに入れる。
- 上清が濁っていた場合、上清を捨て新たな海水に変える。(注1)
- iii のビーカーに1 mM 1-methyladenineを10 µl加え、良く攪拌し、15-20分処理する。
- 海水が入った9cmシャーレに卵巣をピンセットで移し、ハサミを用いて細かく切断する。
- 卵巣から出てきた卵を観察し、卵核胞がなくなっている事をチェックする。
- 卵懸濁液を試験管に移し、手回し遠心機を用いて卵を集める。
- vii の上清を捨て、新たな海水10 mlで未受精卵を懸濁した後、500mlビーカーに移す。
- 受精法
- 1. の作業で得た精子数滴(1-4滴)を 2.で準備した未受精卵懸濁液に加え、よく攪拌する。
- 受精膜を確認した後、未授精卵の体積1mlあたり(注2)、200-300mlの海水を加えて懸濁し、攪拌培養する(20 ℃, 30 rpm)。
- 20℃の温度条件で、64細胞期は4時間、胞胚は16時間、中期原腸胚は24時間、後期原腸胚は36時間、ビピンナリア幼生は60時間インキュベートすると、目的の発生ステージのサンプルが得られる。
ポイントやトラブルシューティング
- 注1:濁ったまま作業を進めると、発生がうまく進まないことがあるので、濁った場合は、かならず海水を入れ替える。
- 注2:本作業を実施するにあたっては、卵巣が充分に成熟した親個体を準備する必要がある。具体的には、5~7月は東京湾、9~12月は青森県陸奥湾産のイトマキヒトデが実験に使用できる。
印刷用PDFマニュアル
- イトマキヒトデの受精法
(211KB)