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イベント・ニュース

[2011.11.19]大学教育推進プログラム 自然科学教育シンポジウム(第1回) 終了

日時 2011年11月19日 (土) 13:00~17:20
会場 慶應義塾大学日吉キャンパス、来往舎1階シンポジウムスペース
内容 「科学的思考力を育む文系学生の実験の開発」
-いま学生に何が求められているのか-
参加費 参加費無料

趣旨

2010年度に採択された本取組の理念を確認し、また事業の途中経過を報告し,今後のめざす方向を明らかにする。また,文系学生に求められている科学的思考力とは何かに焦点を当て,実験を通してそれをいかに育むかについて議論する場としたい。

プログラム

第1部 活動報告

13:00-13:10 開会のあいさつ  長谷山 彰 氏(慶應義塾教育担当常任理事)


13:10-13:35  報告1.「科学的思考力,実学と実験  -取組の目的と内容-」
青木 健一郎 氏(教育推進プログラム実行委員長,日吉物理学教室 外部リンク(新しいウインドウが開きます) , 経済学部 外部リンク(新しいウインドウが開きます)教授)

2010年度より文部科学省の大学教育・学生支援推進事業大学教育推進プログラムに採択された「科学的思考力を育む文系学生の実験の開発 -実学の伝統の将来への継承-」は,自然科学研究教育センターが中心となって慶應義塾大学で実施している取組です.科学的思考力は自然科学を専門とする者だけではなく,全ての学生が早い段階で身につけるべき能力であり,それが他の学問を学ぶ際,そして様々な状況で重要な判断を下す際に生涯を通じて大きな力を発揮すると考えています.科学的思考力は,実学の精神の伝統を汲んだものであり,現代社会においてますます重要になってきています.本取組ではこのような科学的思考力を,文系学生も全員が身に付けられるようなプログラムを開発する事を目的としています.講演では科学的思考力として我々が重視しているものを論じ,取組の目的を説明して現状を総括します.


13:35-13:55  報告2.実験テーマの開発(物理)
松浦 壮 氏(日吉物理学教室 外部リンク(新しいウインドウが開きます) , 商学部 外部リンク(新しいウインドウが開きます)専任講師)

一般に、科学的な思考力を養うための非常に有効な方法として、実験・実習を通じて実際に現象に触れ、科学的手続きによって分析し、その結果をレポートとしてまとめる、という一連の経験を積むことが挙げられる。このような観点から、慶應義塾大学では、主に1・2年生の文系学生を対象に、幅広い範囲の実験を含んだ物理学の講義が提供されている。本講演では、科学的な思考力や基礎知識を養うために取り入れられている工夫に焦点を当てながら、現在採用されている物理学実験の内容を紹介し、その長所と短所を議論する。その上で、より効果的な教育効果を生むために現在開発を続けている実験プログラムについて紹介する。


14:00-14:20  報告3.実験テーマの開発(化学)
大場 茂 氏(センター外部リンク(新しいウインドウが開きます)所長,日吉化学教室, 文学部 外部リンク(新しいウインドウが開きます)教授)

新しい実験テーマを二つ開発し、2011年度から実施した。(1)「中和滴定と可視吸収スペクトル」では、指示薬のpHに伴う色変化の見本を作成し、中和点の見極め方を実験者が考える。また、溶液の色と吸収スペクトルとの関係も調べる。(2)「自然放射線と放射能鉱物」では、ガイガーカウンターを用いて、身近な昆布などからも放射線が出ていることを確認する。また、KClなどのサンプルから検出される放射線が主にα、β、γ線のどれであるか、紙やアルミ板などの遮へい材を用いて判別する。なお、学生用補助教材として、ガスバーナーの使い方などの動画を作成し公開した。


14:20-14:40  報告4.実験テーマの開発(生物学)
倉石 立 氏(日吉生物学教室外部リンク(新しいウインドウが開きます)文学部 外部リンク(新しいウインドウが開きます)専任講師)

生物学分野では「造礁サンゴの生活史」、「アルコール分解に関わる酵素の遺伝子型解析」、「スジエビの心拍数に与えるニコチンの影響」などの実験テーマ開発を行っている。このうち、「造礁サンゴの生活史」では同じ標本を共有しながら1) 発生順序を推測させることによって ”論理的思考を養成する実験” と、2)発生順序に海流などの生態学的データを合わせて「サンゴ礁の保全」に関して提案する ”プレゼンテーション能力を養成する実験” の2種類を作製した。両者の概要と、これらを授業で実践試行した結果を中心に報告を行う。


14:40-15:00  報告5.実験とレポート作成を重視した総合教育科目としての心理学教育の試み
中野 泰志 氏(日吉心理学教室 外部リンク(新しいウインドウが開きます) , 経済学部 外部リンク(新しいウインドウが開きます)教授)


第2部 講演と討論

15:10-16:10 講演 「文系学生の科学的思考力増進のための心理学教育-講義・演習・実習の総合-」
辻 敬一郎 氏(名古屋大学 外部リンク(新しいウインドウが開きます)名誉教授,日本学術会議 外部リンク(新しいウインドウが開きます)連携会員)

学部や専攻を超えて,科学的思考の「習性」と「力量」を養うには,知的生産過程を追体験できる「実習」授業が効果的である。ここでは,全学共通教育における「実習」授業の意義とその設計について演者のささやかな経験を踏まえて考える。また,専門教育とは異なる観点から「学術論・学術史」の授業科目の導入を提案する。

初年次に「心理学実習」の授業を設けるのにはそれなりの根拠がある。感情や学習など,心理学の扱う事象は,論理的に構成されたものである。その点,実体を扱う物質科学にはない難しさが伴う。学生は,心理事象を解明する過程を追体験することによって,自身のイメージにある「科学」をとらえなおす貴重な機会を得ることができるであろう。この授業を設計するにあたっては,その意義に照らして,取り上げるテーマの選定やその配列などの要件を明確にすることが必要である。

他方,個別授業を位置づける枠組みもまた重要である。演者はかねてより,全学共通教育としての「学術論・学術史」授業の必要性を指摘してきた。これは,専門教育における個別分野の「学論・学史」の前段階に据えられる科目であり,学生の専攻する分野の特質を俯瞰的にとらえるのに役立つにちがいない。

大綱化によって一般教育と専門教育の区分が取り払われた現在,「教養」とはなにか,教養教育はいかにあるべきかがあらためて問われるが,演者は「専攻以外の専門」こそが教養だと考える。専攻が違っても,その共通項によって分野連携による課題達成が可能になるはずであり,この種の「教養」がいま求められているのであろう。

本講演の表題は,シンポジウムの趣旨に添って文系学生対象としたが,ここに述べる見解はかならずしも文系に限られるものではないことを付言しておく。


16:20-17:10 パネルディスカッション 「 科学的思考力を育むにはどうするか」

議論する予定の項目:

  1. 日本における理科教育の問題点と大学の役割
  2. 「科学的思考力」とはそもそも何か,学生に求められている科学的思考力とは何か
  3. 実験を通して科学的思考力をいかに育むか

17:10-17:20 閉会のあいさつ  真壁 利明 氏(慶應義塾研究担当常任理事)

実施報告

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イベントについて

参加対象は、慶應義塾教職員をはじめとして、他大学等の教育関係者を想定しています。学生、大学院生、ならびに一般の人も参加できます。なお、会場準備の都合上、学外の方は事前の申し込みをメール(センター事務局宛て)でお願いします。


問合せ先:慶應義塾大学 自然科学研究教育センター 事務局 (日吉キャンパス来往舎内)
〒223-8521 横浜市港北区日吉 4-1-1
Tel: 045-566-1111(直通) 045-563-1111(代表) 内線 33016
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