* ヒドラの解離と構成細胞の観察・同定 [#g0e9f4b0]
RIGHT:SIZE(9){画像をクリックすると拡大表示されます。}
#ref(生物学実験/タイトル画/Tヒドラ.jpg,exif,right,wrap,around);
#contents

** 実験のねらいと特徴 [#y7ba2849]
ヒドラ個体を個々の細胞にまで解離する操作を行い、ヒドラの細胞を観察する。 この実験を通して、多細胞動物を構成する細胞の形態と機能を理解させる。 なお、細胞種の同定にあたり、細胞分類表を使うことを体験させる。

*** 実験の流れ [#gdddd8cb]
+ 準備
++ 使用する[[材料>#mate]]、[[試薬>#chem]]、[[器具>#inst]]の準備
++ 班や机ごとなどに、あらかじめヒドラをシャーレに入れ、小分けにする。
+ 前説明
++ ヒドラについて
++ ヒドラを構成する細胞について
++ [[スケッチの意義と描き方>生物学実験/スケッチの描き方]]について
++ [[明視野顕微鏡の使い方>生物学実験/顕微鏡の使い方]]について
+ 実験中
++ ヒドラの解離と観察
+ 実験後
++ レポートの作成と提出
++ 残ったヒドラの回収や片付け

** はじめに  [#qab995ef]
ヒドラは、飼育のし易さやその構造や行動の面白さから、生物学実験に広く使われている。ヒドラは、クラゲ、サンゴやイソギンチャクと共に刺胞動物と呼ばれるグループに属する。1 cm前後の淡褐色の動物で池や沼の石や水草に付着して生活する。生育に適した条件下では出芽という[[無性生殖>#term1]]&aname(term1r);によって増殖する。一方、受精による[[有性生殖>#term2]]&aname(term2r);も行う。受精卵は細胞分裂を繰り返して細胞数を増やし、やがて細胞間で形と機能の違い(細胞分化)が生じ、個体が形成されていく([[図1>#fig1]])。ヒドラの成体は約10万個の細胞からなり(我々ヒトはおよそ60兆個、200種の細胞から構成されている)、それらはわずか6種類の細胞種に分類することができる。すなわち、1)[[表皮筋細胞>#term3]]&aname(term3r);、2)[[刺胞細胞>#term4]]&aname(term4r);、3)[[間細胞>#term5]]&aname(term5r);、4)[[消化細胞>#term6]]&aname(term6r);、5)[[腺細胞>#term7]]&aname(term7r);、6)[[神経細胞>#term8]]&aname(term8r);である([[図2>#fig2]], [[図3>#fig3]])。

|CENTER:&ref(ヒドラの構造1.jpg);&aname(fig1);|CENTER:&ref(ヒドラ細胞2.jpg);&aname(fig2);|
|CENTER:''図1.ヒドラの構造''&br;内胚葉をピンクで 外胚葉をブルーで示す。囲み部分の拡大は[[図2>#fig2]]|CENTER:''図2.ヒドラのおもな構成細胞模式図''|
#br
|CENTER:&ref(ヒドラ細胞検索表.jpg);&aname(fig3);|
|CENTER:''図3.ヒドラ体細胞の検索図''|
#br

** 目的と課題 [#ya85ab99]
- ''(目的1)''ヒドラの成体(個体)を個々の細胞にまで解離し、光学顕微鏡を用いて6種類の細胞を同定する。
-- ''課題1'':同定した6種類の細胞をスケッチする。

** 実験 [#y562b1d9]
*** 材料&aname(mate); [#ce5ee706]
- ''チクビヒドラ('''Hydra magnipapillata''')'':(1個体のヒドラ/1人)&br; 入手法や培養法は[[『ヒドラの飼育法』>生物学実験/ヒドラの飼育法]]参照

*** 試薬&aname(chem); [#g7ced4c3]
- ''解離液'':グリセリン、酢酸、水の混合液(それぞれの容量比は、1:1:13)
- ''染色液'':0.05% メチレンブルー水溶液 

*** 器具&aname(inst); [#m372ff29]
- ''パスツールピペット''(2本/1人)
- ''スライドガラス''(1枚/1人)
- ''カバーガラス''(1枚/1人)
- ''切断したろ紙片''(数片/1人)
- ''スケッチ用紙''(1枚/1人)
- ''H以上の硬質鉛筆''(1本/1人)
- ''[[光学顕微鏡>生物学実験/顕微鏡の使い方]]''(1台/1人)

*** 手順 ([[Flash Movie>#movie]])[#a85fe566]
+ ''ヒドラを構成する細胞の観察''
++ スライドガラス上にヒドラを一匹のせる。
++ 余分な水分をろ紙で吸い取る([[注1>#attention1]]&aname(attention1r);)。
++ 解離液を5滴落とし、5分間放置する。
++ 余分な解離液をろ紙で吸い取る([[注2>#attention2]]&aname(attention2r);)。
++ カバーガラスの側面を使ってヒドラを砕く([[注3>#attention3]]&aname(attention3r);)。
++ 染色液を一滴落とし、カバーガラスをかけて光学顕微鏡で観察する。
++ 検索図([[図3>#fig3]])を参考にして、細胞の大きさと形、染色性に基づき、細胞の同定を行う。&br;観察倍率は、100倍と400倍。100倍で同定したい細胞を選択し、400倍で詳細な形態観察を行う。
#br
+''Flash Movieによる手順''&aname(movie);
#flash(hidoracell.swf,640x480,loop="true")
''画面左下のアイコンについて''&br;
&ref(生物学実験/アイコン/右2.jpg,,70%);3秒間隔の自動でページを進めます。&br;
&ref(生物学実験/アイコン/停止.jpg,,70%);そのページで停止します。&br;
&ref(生物学実験/アイコン/右1.jpg,,70%);手動で次のページを表示します。&br;
&ref(生物学実験/アイコン/左.jpg,,70%);一つ前のページに戻ります。&br;
RIGHT:再生には[[Adobe Flash Player>http://get.adobe.com/jp/flashplayer/]]が必要です。

*** ポイントやトラブルシューティング [#qe482d82]
- &aname(attention1);[[注1>#attention1r]]:水分を取り除かないと、解離液の濃度が薄くなってしまう。
- &aname(attention2);[[注2>#attention2r]]:乾かない程度に吸い取る。
- &aname(attention3);[[注3>#attention3r]]:塊がなくなるまで細断化する。

*** 実験を成功させるための留意点 [#q5b75216]
''実験前''
- 最低1人あたり1個体のヒドラを供与できるように増やしておく。

''実験中''
- 解離液を処理する前に、ヒドラ周囲の溶液をよく取り除く(解離液濃度の低下を防ぐため)。
- スライドガラス上のヒドラにカバーガラスをかぶせる際に、気泡が入らないように注意する。
-標本が乾燥しないように留意させる(カバーガラスの側面から、ときおり水分を供給させる)。

** 本実験の発展 [#f36aa19a]
[[『ヒドラの摂食行動とその認識』>生物学実験/ヒドラの摂餌行動とその認識]]の実習と組み合わせることができる。

**資料 [#j45ca6e5]
*** 参考文献 [#j08e16f1]
- 小泉修(1993) ミクロスコピア10:172-176
- 小泉修(1994) ミクロスコピア11:22-26 
- 三浦淳子(1998)遺伝 別冊10号(11):59-62

*** 用語解説 [#a845eeb7]
:&aname(term1);[[無性生殖>#term1r]]|1つの個体が単独で新たな個体を作り出す方法。

:&aname(term2);[[有性生殖>#term2r]]|精子と卵などの生殖細胞により新たな固体を作り出す方法。
:&aname(term3);[[表皮筋細胞>#term3r]]|ヒドラにおいては、体の大部分の表皮を構成する細胞であり、筋肉の役割も有している。
:&aname(term4);[[刺胞細胞>#term4r]]|ヒドラにおいては、袋状の形態を持ち、刺激を受けると袋を反転させながら、内部の刺糸を放出する細胞である。外胚葉領域に分布している。
:&aname(term5);[[間細胞>#term5r]]|ヒドラにおいては、様々な細胞に分化する能力を持っている細胞。小型で球状の形態を持つ。
:&aname(term6);[[消化細胞>#term6r]]|ヒドラにおいては、胃腔の表皮を構成する細胞である。 
:&aname(term7);[[腺細胞>#term7r]]|ヒドラにおいては、消化酵素を分泌する細胞で、胃腔に取り込まれた餌を消化する。消化酵素を含んだ分泌顆粒を細胞内に有している。
:&aname(term8);[[神経細胞>#term8r]]|ヒドラにおいては、突起を発達させた細胞であり、互いの突起を接着させ合うことにより、神経ネットワークを形成している。内外胚葉領域に分布している。

***PDFマニュアル [#y563ccf6]
***印刷用PDFマニュアル [#y563ccf6]
#ref(ヒドラの解離と構成細胞の観察・同定.pdf)

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