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2019.10.052019年センター開所10周年記念シンポジウム 終了

日時 2019年10月05日 ( 土 )  13:00〜17:30
会場 日吉キャンパス 第4校舎B棟 J11番教室
主催 慶應義塾大学 自然科学研究教育センター
内容 自然科学のこれまでと今後の展望
講師 新田宗土 
慶應義塾大学 商学部 物理学教室 教授
センター所員

井奥洪二 
慶應義塾大学 経済学部 化学教室 教授
センター副所長

林 良信 
慶應義塾大学 法学部 生物学教室 専任講師
センター所員

南 就将 
慶應義塾大学 医学部 数学教室 教授
センター所員

伊澤栄一 
慶應義塾大学 文学部 生物心理学研究室 教授
センター所員
参加費 無料(申込不要)
対象 一般・学生・教職員

このイベントは終了しました。

プログラム

13:00-13:10 開会挨拶 青山藤詞郎(本塾常任理事・慶應義塾大学名誉教授)

13:10-13:50 講演1. 『物理学とトポロジー』
新田宗土(慶應義塾大学 商学部 物理学教室 教授・センター所員)

13:50-14:30 講演2. 『生体に学び,生体を超える―物質・材料化学の未来―』
井奥洪二(慶應義塾大学 経済学部 化学教室 教授・センター副所長)

(休憩 15分)

14:45-15:25 講演3. 『ゲノム科学でつなぐ「4つの問い」―昆虫における社会性の包括的理解を目指して―』
林 良信(慶應義塾大学 法学部 生物学教室 専任講師・センター所員)

15:25-16:05 講演4. 『アンダーソン局在をめぐる数学の話題』
南 就将(慶應義塾大学 医学部 数学教室 教授・センター所員)

(休憩 10分)

16:15-16:55 講演5. 『生物心理学: カラスをモデルとした"こころ"の進化』
伊澤栄一(慶應義塾大学 文学部 生物心理学研究室 教授・センター所員)

16:55-17:25 総合質疑討論

17:25-17:30 閉会挨拶 金子洋之(センター前所長・文学部教授)

講演要旨

『物理学とトポロジー』(新田宗土)

 最近の物理学の発展の中でも,トポロジーを用いた物理学について紹介します。トポロジーは古くから素粒子物理で大きな役割を果たしてきました。ここ10年間は,物性物理におけるトポロジーの応用が,世界中で盛んに研究されてきており,2016年のノーベル物理学賞も物性物理におけるトポロジーの応用について与えられました。
 この発表では,慶應義塾大学自然科学研究教育センターにおいて,ここ5年ほど行われている「トポロジカル・サイエンス」というプロジェクトを中心に紹介いたします。このプロジェクトでは,トポロジーを通してありとあらゆる物理学の分野を統合し新しい分野を確立すること,そして最終的には物理学以外の自然科学や社会科学にまで適用しようという野心的な試みです。


『生体に学び,生体を超える―物質・材料化学の未来―』(井奥洪二)

 化学とは,物質が何からどのような構造で出来ているのか,どのような特徴や性質を有しているのか,物質の反応はどのように起こり何が生成するのか,を研究する学問だと一般に理解されています。歴史的には,17世紀後半に錬金術に情熱を傾けたロバート・ボイルが,アリストテレスらによって唱えられた物質の四元素(火・空気・水・土)説を否定し,その後も続々と偉人たちによる発見と論理的な展開により,錬金術は近代化学へと変貌しました。ボイルは,彼の名をとった法則で有名ですが,しばしば近代化学の祖と言われています。錬金術の試行の過程において,硫酸,硝酸,塩酸などの発見や実験道具の発明があり,さらに産業革命にともなって化学は急速に進展し,その時代に無くてはならない学問ならびに技術分野としての確固たる地位を築きました。
 このような歴史的背景を基にして,近年では他分野との融合が進んでいます。物質を原子,分子,その集合体の大きさ単位で扱う化学は,理工学全般に強く関連しています。例えば,医歯薬学,農学,環境科学,生命科学,エレクトロニクス,新素材,機能材料,宇宙工学など最先端の科学技術分野に新物質の創製や材料の設計・製造の新手段を開発する上で化学は欠かせない存在となっています。本講演では,再生医療など医工学分野における化学に焦点を当てて,物質・材料の設計と応用の現状と未来への展望を紹介します。


『ゲノム科学でつなぐ「4つの問い」―昆虫における社会性の包括的理解を目指して―』(林 良信)

 生物がもつある性質は,4つの異なる観点から研究を行うことができる。たとえば,ある種のホタルの「光る」という性質については,①どのような仕組みで光ることができるのか(機構),②光るために必要なものが個体の成長過程でどのように構築されるのか(発達),③光ることは生存や繁殖にどのように役立っているのか(機能),④そのホタルの「光る」という性質,あるいは光の強さや点滅の仕方などの「光り方」がその祖先からどのような過程を経て進化してきたのか(進化),というように4つの観点から研究上の問いを設けることができる。それらは「ティンバーゲンの4つの問い」と呼ばれ,それら4つの研究は基本的には互いに独立に行われる。しかし,生物に対する最も深い理解を得るためには,4つの問いの全ての答えを明らかにし,さらにそれらを統合して理解する必要がある。
 4つの研究の包括的・統合的理解においては,ゲノム科学が重要な役割を担う。ゲノムに含まれる遺伝情報は,生物の体・性質を形成するための「設計図」であり,また,わずかな変化(突然変異)をしながら世代から世代へと受け継がれ進化の歴史を刻み込む「古文書」でもある。このようにゲノムは,様々な生命現象の根幹をなすものであり,4つの研究のいずれにも関わるために統合的な理解において重要となる。近年では遺伝子解析の技術革新によって様々な生物でゲノム科学的手法を利用することが可能になっており,生物学は統合的理解も目指すべき時代に入ったといえる。
 本講演では,社会性昆虫がもつ「社会性」という性質について,これまでの研究を振り返るとともに,ゲノム科学を用いた統合的研究の今後の道すじを考える。


『アンダーソン局在をめぐる数学の話題』(南 就将)

 電子のような素粒子を記述する量子力学とは,とても抽象的な理論です。それによると粒子の状態は空間内の点の動きとしてではなく,ある広がりを持つ波動関数で表わされます。空間的に規則的な力の場における粒子の波動関数はほぼ一様に広がっており,粒子のエネルギーはある範囲の値を連続的に取りますが,空間の一点に引きつけるような力の場における粒子の波動関数はその中心の近傍に局在し,粒子のエネルギーはとびとびの値を取ります。
 1958年に物理学者アンダーソンは,特定の点に引きつけるのでもなく,空間的な規則性も持たない乱れた力の場においては,粒子の波動関数がある点の近傍に局在すると述べました。この主張に対する厳密な証明は20年後に旧ソ連の数学者たちによって,特殊なモデルに対して与えられましたが,それと同時に粒子のエネルギーの値の分布は不連続でありながらとびとびではなく,ある範囲を埋め尽くすという新しい数学的現象も発見されました。それ以来,乱れを含む物理系の量子力学モデルに対する数学的な研究が数多くなされ,その結果,乱れを含む多様なモデルに対するアンダーソン局在の存在,可能なエネルギー値の分布の統計的な特徴などがわかっています。その一方,対象の複雑さによる数学的困難と物理学への有効な橋渡しの不在による,研究の行き詰まりの影も見え始めました。
 講演ではこのテーマの歴史を振り返り,今後の展望について述べたいと思います。


『生物心理学: カラスをモデルとした"こころ"の進化』(伊澤栄一)

 私たちヒトの道具使用や複雑なコミュニケーション能力の起源はどこにあるのだろうか?"こころ"の起源の探求には2つのアプローチがある。1つは,ヒトと進化的に近い(例:類人猿)動物たちとの比較から探るアプローチである。これは,ヒトと類似の脳や身体をもつ動物がヒトと「どこまで類似し,違いが生じた要因は何か」を探るアプローチである。もう1つは,ヒトとは進化的に遠く離れながらも,行動や生態(くらし)にヒトとの類似性がみられる動物種を対象に「類似性が生じた要因は何か」を探るアプローチである。後者のアプローチにおいて鳥類は興味深い対象である。恐竜の子孫である鳥類は,系統発生学的に哺乳類とは約3億年前に分岐し,私たちヒトとは全く異なる身体や脳のつくりをしている。形態や代謝など様々な生物学的な違いがありながらも,カラスなどの一部の種には,一夫一妻や流動社会を支える複雑なコミュニケーションや,道具を作って使うなど,ヒトやチンパンジーと類似した行動・生態が独立に進化している。
 本講演では鳥類カラスを題材として,群れ内の秩序形成やそれを支える個体間のコミュニケーション,あるいは,道具使用を支える形態や行動のメカニズム,脳構造など,類人猿との共通・相違性を通じて,動物行動の多様性・類似性から垣間見える"こころ"の進化について,自然科学ならではの文理融合研究を紹介したい。

プロフィール

  • 新田宗土

    慶應義塾大学 商学部 物理学教室 教授・センター所員

    学歴:2000年 大阪大学・博士(理学)
    専門領域:理論物理学(素粒子論と物性理論)
    研究内容:トポロジーを用いて,素粒子論や物性理論などありとあらゆる物理学の分野を統合的に理解すること。

  • 井奥洪二

    慶應義塾大学 経済学部 化学教室 教授・センター副所長

    略歴:
    1989年 東京工業大学 大学院博士後期課程 単位取得退学
    1989年 高知大学 理学部 助手
    1994年 山口大学 工学部 助教授
    2001年 山口大学 大学院医学系研究科 助教授
    2003年 東北大学 大学院環境科学研究科 助教授
    2006年 東北大学 大学院環境科学研究科 教授
    2012年 慶應義塾大学 経済学部 教授
    現在に至る。工学博士。
    専門領域:
    物質・材料学,医工学,環境科学
    研究内容:
    科学技術のベネフィットとリスクに関する研究
    幹細胞を必要としない再生医療用材料の創製
    バイオリアクターに向けた新素材の創製
    主な著書:
    「新しいくらしかたのか・た・ち」
    井奥 洪二, 石田 秀輝, 彼谷 邦光, 高橋 由貴彦, 田路 和幸, 安田 喜憲,芸立出版, 2007年9月
    (他20件)

  • 林 良信

    慶應義塾大学 法学部 生物学教室 専任講師・センター所員

    2006年,茨城大学大学院理工学研究科・博士後期課程修了,博士(理学)取得。日本学術振興会特別研究員PD,同会海外特別研究員などを経て,2019年4月より現職。専門分野は,昆虫社会学,進化ゲノム学。主にシロアリの社会性に関する研究をおこなっている。

  • 南 就将

    慶應義塾大学 医学部 数学教室 教授・センター所員

    学歴:
    1981年3月 東京工業大学理学部応用物理学科 卒業
    1983年3月 東京工業大学大学院理工学研究科修士課程応用物理学専攻 修了
    1986年3月 東京工業大学大学院理工学研究科博士課程応用物理学専攻 退学
    1988年11月 理学博士(東京工業大学)
    専門領域:
    数学(確率論,数理物理学)
    研究内容:
    1) ランダム作用素のスペクトル理論
    2) ランダムな樹形図とその応用
    3) 感染症の数理モデル
    著書:
    『明解 微分積分』(共著) 数学書房,2010年

  • 伊澤栄一

    慶應義塾大学 文学部 生物心理学研究室 教授・センター所員

    学歴:
    名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程修了 博士(農学)
    専門:
    動物心理学・神経行動学
    研究内容:
    鳥類(主にカラス)の社会行動および採餌行動の心理・形態・生理メカニズムの解明を通した"こころ"の進化の理解
    おもな著作:
    「遺伝子から解き明かす脳の不思議な世界」(分担執筆,一色出版,2018)
    「比較認知科学」(分担執筆,放送大学NHK出版,2017)
    「A Stereotaxic Atlas of the Brain of the Jungle Crow(カラスの脳地図)」(共著,慶應大学出版会,2007)など


センター主催のシンポジウム・講演会について

当センターの活動の一環として、シンポジウム・講演会を年3〜4回程度開催しています。その目的は、多分野にまたがる自然科学の相互理解を深め、研究の推進と教育の質の向上を図ることにあります。参加費は無料です。聴講の対象も制限はありません。特に指定のない場合、事前申込は不要です。ただし、取材の場合は事前に許可を取って下さい。

天災・交通事情など予期せぬ事態により変更・中止となる場合がございます。
その場合、本ウェブサイトで告知しますので、事前にご確認下さい。


問合せ先:慶應義塾大学 自然科学研究教育センター 事務局 (日吉キャンパス来往舎内)
〒223-8521 横浜市港北区日吉 4-1-1
Tel: 045-566-1111(直通) 045-563-1111(代表) 内線 33016
recns_mailaddress

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